なぜ出版業界から中古車業界へ?―いま振り返ると、やっていることは同じだった

最近、「なぜ出版業界から中古車業界に転身したんですか?」と聞かれることが増えました。
たしかに、出版と中古車。
まったく違う業界に見えます。
本をつくる仕事をしていた人間が、なぜ車を査定して、買い取って、オークション市場を毎日のように見るようになったのか。
自分でも、以前だったらうまく説明できなかったかもしれません。
でも最近、少しずつ言葉にできるようになってきました。

正直に言えば、出版業界に未来を感じにくくなった

最初に正直なことを書けば、出版業界に以前ほど未来を感じられなくなったことは、理由の一つです。
もちろん、本には今でも大きな価値があると思っています。
出版という仕事から学んだこともたくさんあります。
ただ、業界そのものを見たときに、自分がこの先ずっとここで仕事をしているイメージを持てなくなりました。
そこで、まったく違う世界へ出てみようと思いました。
ただ、それだけで中古車業界を選んだわけではありません。
もう一つ、大きなきっかけがありました。

自分で車を売ったときの経験が、あまり良くなかった

自分自身が車を売ったときの経験です。
詳しいことはここでは書きませんが、決して気持ちのいい経験ではありませんでした。
車を売るということ自体、一般の人にとってはそう何度も経験するものではありません。
自分の車がいくらなのか。
どこへ売ればいいのか。
提示された査定額は妥当なのか。
今決めるべきなのか。
もう少し待ったほうがいいのか。
何を基準に業者を選べばいいのか。
わからないことがたくさんあります。
一方で、買取業者側には経験があります。
毎日のように車を見て、相場を見て、商談をしている。
ここには大きな情報量の差があります。
実際に自分が売る側になってみて、
「これは判断するのが難しい」
と感じました。

中古車業界には、本当にいろいろな業者がいる

その後、自分が中古車業界に入り、買取の現場に立つようになりました。
すると、外から見ていた以上に、いろいろな業者がいることがわかりました。
査定の仕方も違う。
価格の出し方も違う。
営業の仕方も違う。
買い取ったあとの売却先も違う。
お客様との向き合い方も違う。
同じ「車買取店」という看板を掲げていても、中身はかなり違います。
だから、
「どこの業者に頼んでも同じ」
ではありません。
でも、一般のお客様がその違いを事前に見極めるのは簡単ではありません。
ここにも、判断の難しさがあります。

中古車は、日本だけを見てもわからない

そして、この仕事を始めて面白いと思ったことがあります。
中古車は、日本国内だけで価格が決まっているわけではないということです。
日本の中古車は世界中で取引されています。
車種によっては、国内より海外の需要が相場へ強く影響することもあります。
為替が動く。
輸出先の制度が変わる。
海外の経済状況が変わる。
物流が変わる。
国際情勢が変わる。
すると、日本で売られている中古車の価値にも影響する。
一台の中古車を見ているだけなのに、その向こう側に世界の市場がある。
これは非常に面白いと思いました。

車の価格を見ているようで、人の判断を見ている

毎日のように中古車市場を見ていると、さらに気づいたことがあります。
市場を見ているということは、単に価格を見ていることではないということです。
この車を欲しいと思った人がいる。
この価格なら買うと判断した業者がいる。
この価格では買わないと判断した業者がいる。
国内で売ろうと考えた人がいる。
海外へ輸出しようと考えた人がいる。
そこには、無数の判断があります。
以前から私は、
「市場は価格の集合ではなく、判断の集合」
だと考えるようになりました。
価格の裏側にある、人の判断を見る。
これが中古車市場を観察する面白さの一つだと思っています。

情報が多いほど、判断が簡単になるとは限らない

今は、車を売ろうと思えばたくさんの情報を手に入れられます。
相場情報。
一括査定。
AI査定。
SNS。
YouTube。
口コミ。
買取店の広告。
「高く売る方法」という情報もたくさんあります。
でも、情報が増えれば増えるほど、判断が簡単になるとは限りません。
むしろ、
「結局、何を信じればいいのか」
「自分の場合はどうなのか」
と迷うこともあります。
だから必要なのは、情報の量だけではないと思っています。
情報を整理し、自分が判断できる状態にすること。
ここが重要です。

「高く売る方法」だけを伝えたいわけではない

私は今、「後悔しない車の売り方」というテーマで発信を続けています。
でも、単に、
「この方法なら高く売れます」
と伝えたいわけではありません。
もちろん価格は重要です。
できるだけ高く売りたいという気持ちは当然です。
ただ、車を売る人が大切にしているものは価格だけではありません。
時間。
安心。
納期。
手間。
次の車との関係。
家族の事情。
人によって違います。
だから私は、相場や査定額だけでなく、
「自分は何を大切にして売るのか」
まで考えてほしいと思っています。
判断基準は、買取店から与えられるものではありません。
情報や選択肢を知り、自分の価値観からつくっていくものです。

出版と中古車。やっていることは意外と同じだった

ここまで考えて、最近気づいたことがあります。
出版業界から中古車業界へ。
まったく違う仕事に転身したと思っていました。
でも、自分がやっていることの根っこは、それほど変わっていないのかもしれません。
編集者の仕事は、情報を集めることから始まります。
取材する。
調べる。
比較する。
重要なものを選ぶ。
整理する。
そして、読者に理解できる形にして届ける。
今やっていることも、よく考えれば似ています。
中古車市場を見る。
オークションを見る。
国内外の需要を見る。
現場でお客様と話す。
業者の動きを見る。
情報を集める。
そこから意味のあるものを選び、整理して発信する。
情報を集め、編集し、誰かの判断に役立つ形で届ける。
出版から中古車へ移ったようで、自分の仕事の根っこはここにあるのかもしれません。

本ではなく「市場」を編集している

以前は、本をつくっていました。
今は中古車市場を観察しています。
扱うものは大きく変わりました。
でも、
「複雑な情報をどう整理するか」
「読者に何を伝えるか」
「その情報が、その人の判断にどう役立つか」
という問いは変わっていません。
そう考えると、私は出版を完全に離れたわけではないのかもしれません。
今は、
本ではなく、市場から得た情報を編集している。
そんな感覚があります。

後悔しないための「判断材料」を届けたい

車を売ったときの、自分自身のあまり良くなかった経験。
中古車業界に入って知った、業者ごとの違い。
世界とつながって動く中古車市場。
毎日変化する相場。
そして、そこにある人の判断。
それらを見続けるうちに、
「車を売る人が、後悔しないための判断材料をもっと届けたい」
という気持ちが強くなってきました。
買取店だから、
「今すぐ売ってください」
と言うのではない。
情報を出す。
市場を説明する。
選択肢を示す。
考える材料を渡す。
そして、最後は本人が決める。
そんな車買取店があってもいいと思っています。

まとめ|出版から中古車へ。でも、根っこは変わっていなかった

なぜ出版業界から中古車業界へ転身したのか。
きっかけはいくつもあります。
出版業界の将来への問題意識もありました。
自分自身が車を売ったときの経験もありました。
そして実際に中古車業界へ入ってみると、想像以上に奥深い市場がありました。
今では毎日のように、その市場を観察しています。
そして、その情報を編集し、発信しています。
振り返ってみると、
出版から中古車へ転身したというより、編集する対象が変わった。
そんな捉え方のほうが、自分にはしっくりきます。
以前は、本を編集していました。
今は、市場を観察し、情報を編集しています。
その目的は、
誰かが自分で判断するための材料を届けること。
これからも中古車市場を観察し続けます。
価格だけではなく、その裏側にある需要や人の判断まで見る。
そして、車を売る人が自分なりの判断基準を持ち、
「この決断でよかった」
と思えるような情報を届けていきたいと思っています。

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