メディアを事業にするのではない。メディアを基盤に、事業をつくる
最近、「メディア事業」という言葉をよく使ってきました。
ブログ、note、Xなどで情報を発信する。
それ自体をひとつの事業として育てていく。
そんな意味で使っていました。
でも、最近は少し違うように感じています。
僕がやりたいのは、メディアという新しい事業をひとつ増やすことではありません。
メディアを基盤にして、事業そのものを考えること。
こちらのほうが、いま考えていることに近いと思っています。
買取店には自社商品がない
僕がやっている中古車買取という仕事は、少し特殊です。
メーカーのように自社で商品をつくっているわけではありません。
小売店のように、独自の商品を棚に並べているわけでもありません。
お客様の車を査定して、買い取る。
もちろん、査定方法や販売先、得意な車種などには違いがあります。
それでも、お客様から見れば、各社の違いはとても分かりにくい。
だから、どうしても最後は「いくらで買ってくれるのか」という金額の比較になりやすい。
でも、本当に違いがないのでしょうか。
僕はそうではないと思っています。
本当の商品は、目に見えない
同じ車を査定していても、事業者によって見ているものは違います。
市場をどう見ているのか。
なぜその査定額になったのか。
今売るべきだと考えているのか。
もう少し乗ってもいいと考えているのか。
国内だけを見るのか、海外市場まで見るのか。
価格を最優先するのか、安心や時間まで含めて考えるのか。
そして、お客様がなぜその車を売ろうとしているのかまで聞くのか。
こうしたものは、店頭の商品棚には並びません。
でも、事業者によって確実に違います。
だとすれば、買取店が伝えるべきなのは「高く買います」だけではない。
何を見て、何を考え、どう判断している事業者なのか。
そこまで伝える必要があると思っています。
そのために、メディアがあります。
メディアは「目に見えない商品」を見えるようにする
僕は長くブログを書いてきました。
査定した車について書く。
オークションで感じたことを書く。
海外市場について調べる。
為替の変化を考える。
お客様との会話から気づいたことを書く。
失敗したことも書く。
自分なりの判断基準を書く。
ひとつの記事だけを読めば、大したことではないかもしれません。
でも、それが100本、500本、1000本と積み重なっていくと、少し違うものになります。
「この事業者は、こういうことを考えて仕事をしているんだ」
というものが見えるようになるからです。
商品そのものでは差が見えにくい業種だからこそ、考え方を見えるようにする。
メディアは、買取店にとって「目に見えない商品を見えるようにする場所」なのかもしれません。
同業者にも「ひとつメディアを育てたほうがいい」と伝えている
仲のいい同業者には、以前から「ひとつ、自分のメディアを育てたほうがいい」と伝えています。
ブログでもいい。
YouTubeでもいい。
noteでもいい。
SNSでもいい。
何でもいいと思います。
大切なのは、自分が現場で見ていること、考えていることを継続的に蓄積できる場所を持つことです。
ただ、実際にやる人はそれほど多くありません。
始める人はいても、続ける人はさらに少ない。
数本記事を書いても、すぐには問い合わせは来ません。
SNSに投稿しても、必ず反応があるわけではありません。
今日書いた記事が、今日の売上になるわけでもありません。
だから、やめてしまう。
でも、僕はそこにこそチャンスがあると思っています。
継続そのものが、参入障壁になる
ブログを始めるだけなら、誰でもできます。
SNSのアカウントも無料でつくれます。
noteもすぐに始められます。
生成AIを使えば、文章を書くこと自体のハードルも以前よりずっと下がりました。
そう考えると、メディアには参入障壁がほとんどないように見えます。
でも、本当にそうでしょうか。
現場に立つ。
市場を見る。
お客様と話す。
疑問を持つ。
調べる。
考える。
自分の言葉にする。
発信する。
反応を見る。
また現場に戻る。
そして、それを何年も繰り返す。
これは意外と簡単ではありません。
しかも、中古車市場は動き続けています。
去年書いたことが、そのまま今年も正しいとは限りません。
中古車には同じ車が一台としてありません。
だから、過去の記事を並べて終わりではなく、観察も更新も続けなければならない。
メディアは、始めることには参入障壁がない。
でも、続けることには大きな参入障壁がある。
僕は最近、そう考えるようになりました。
そして、この参入障壁は、お金だけでは簡単に越えられません。
昨日ブログを始めた会社が、8年間現場を観察してきた時間を、今日買うことはできないからです。
小さな会社だからこそ、できることがある
大手と広告費で勝負しても、小さな会社には限界があります。
店舗数でも勝てません。
知名度でも勝てません。
人員でも勝てません。
でも、自分の地域のお客様と向き合うことはできます。
一台の車を深く見ることもできます。
オークションへ行って買い手の動きを観察することもできます。
海外市場を調べることもできます。
一人のお客様との会話から得た気づきを、その日のうちに文章にすることもできます。
そして、それを毎日積み重ねることができます。
これは、資本力とは違う競争です。
「どれだけ大きいか」ではなく、「どれだけ深く見てきたか」。
小規模事業者だからこそ、戦える領域があると思っています。
メディアから、事業そのものが生まれてきた
実際、僕自身もブログを書き続ける中で、いろいろなものが生まれてきました。
車売却診断書。
売却相談の考え方。
車種別の判断基準。
市場観察。
海外市場の分析。
note「後悔しない車の売り方」。
セミナー。
そして、日々の査定や市場観察を蓄積し、次の判断に生かす仕組み。
最初から全部を計画していたわけではありません。
発信を続け、考え続けた結果、事業の形が見えてきました。
だから今は、「メディア事業をやる」という表現だけでは少し足りないと思っています。
メディアを基盤に、事業戦略を考える
メディアで市場を観察する。
情報を発信する。
それを読んだ人と出会う。
話を聞く。
査定する。
買い取る。
結果を見る。
そこから学ぶ。
判断基準にする。
そして、また発信する。
市場観察→発信→対話→査定・買取→学習→判断基準→発信。
この循環が回れば回るほど、メディアが強くなる。
同時に、買取事業も強くなる。
そして、そこから新しい商品やサービスも生まれてくる。
だから、メディアは集客のためだけにあるのではありません。
広告の代わりでもありません。
メディアを事業にするのではない。
メディアを基盤に、事業をつくる。
自社商品を持たない中古車買取という仕事だからこそ、これはひとつの大きな可能性になると思っています。
派手な戦略ではありません。
時間もかかります。
すぐに売上になるとも限りません。
でも、時間がかかるからこそ、続けたものが資産になる。
そして、継続そのものが参入障壁になる。
小さな会社だからこそ、そんな地味で時間のかかることを、もっともっと深めていきたいと思っています。













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