出版から中古車買取へ。そして、編集する経営へ。

最近、自分の会社の中に「経営戦略室」のような機能をつくりたいと考えています。
といっても、新しく部署を設けて、人を配置するという話ではありません。
これまで取り組んできたブログやnote、日々の市場観察、顧客との対話、そしてAIの活用。
これらをひとつにつなげ、経営そのものを考える機能です。
少し前までは「メディア事業」という言葉を使っていました。
でも、最近はそれだけでは少し違うように感じています。
メディアを事業にするのではなく、メディアを基盤に事業をつくる。
そんな考え方に変わってきました。
そして、この変化を考えていると、かつて出版業界で仕事をしていた経験が、今になって生きているように感じます。

出版業界から中古車買取業界へ

僕は以前、書籍の編集者として仕事をしていました。
その後、大学で教える仕事なども経験し、現在は中古車買取を中心に複数の事業を経営しています。
出版と中古車買取。
まったく違う業界です。
実際、なぜ出版業界から中古車業界へ転身したのかと聞かれることもあります。
自分自身でも、以前はそれほど共通点を意識していませんでした。
でも最近、実は同じことをやっているのではないかと思うようになりました。
それは、情報を集め、価値を見極め、編集し、必要な人に届けることです。
出版では、それを本という形にしていました。
中古車買取では、市場情報を読み解き、査定額や売却の判断基準という形でお客様に届けています。
扱うものは違いますが、仕事の根本には共通するものがあります。

ブログを書き続けたことで見えてきたもの

2019年8月31日から、毎日ブログを書いています。
最初から明確なメディア戦略があったわけではありません。
その日の査定で気づいたこと。
オークションで感じたこと。
中古車市場の変化。
お客様との会話。
仕事を通じて考えたこと。
そうしたものを、ひとつずつ文章にしてきました。
続けているうちに、少しずつ変化が生まれました。
単に情報を発信するだけではなく、過去に書いたものを整理し、共通する考え方を見つけ、体系化するようになったのです。
車売却診断書。
売却相談の進め方。
営業の7STEP。
車種別の判断基準。
中古車市場の観察と分析。
note「後悔しない車の売り方」。
これらは、最初から計画してつくったものばかりではありません。
現場で経験し、考え、書き続けたことで生まれてきたものです。
ブログは集客のための道具だと思われがちです。
もちろん、その役割もあります。
でも僕にとっては、それ以上のものになっていました。

メディア事業部ではなく、経営戦略室

最近、メディアの位置づけを考え直しています。
記事を書く。
SNSで発信する。
アクセスを増やす。
問い合わせにつなげる。
それだけであれば、メディア事業部という位置づけでもいいと思います。
でも、今やろうとしていることは、もう少し広い。
中古車市場を観察する。
そこから仮説を立てる。
実際の査定や買取で検証する。
顧客との対話から新しい課題を見つける。
経験を言語化し、判断基準にする。
営業の仕組みを改善する。
AIを使って知識を蓄積する。
そして、そこから次の事業戦略を考える。
メディアを中心に、市場観察、営業、顧客理解、組織学習、事業企画がつながっていく。
これなら、メディア事業部というより「経営戦略室」に近いと思います。
もちろん、今は小さな会社です。
立派な部署も、専任の担当者もいません。
でも、小さな会社だからこそ、こうした機能を経営の中心に置くことができるのではないかと考えています。

現場×メディア×AI

この構想を考えるうえで、重要な要素が3つあります。
現場、メディア、AIです。
現場は、一次情報が生まれる場所です。
査定をする。
お客様と話す。
オークションを見る。
買い手の動きを観察する。
実際に車を売却し、その結果を確認する。
ここには、ネット上の情報だけでは得られない経験があります。
メディアは、その経験を編集し、伝え、蓄積する場所です。
現場で起きたことを文章にする。
市場の変化を解説する。
判断基準を整理する。
それを読者に届ける。
そしてAIは、蓄積された経験や情報を整理し、次の判断に活用するための仕組みです。
過去の査定事例を比較する。
市場の変化を分析する。
判断基準を体系化する。
営業の進め方を改善する。
これまで個人の経験として蓄積されていたものを、会社全体で使える知識に変えていく。
現場で情報が生まれ、メディアで編集され、AIによって学習し、また現場に戻る。
この循環をつくりたいと思っています。

編集することが、経営になる

出版業界で働いていた頃、編集という仕事は、単に文章を整えることではありませんでした。
何をテーマにするのか。
どんな問いを立てるのか。
誰に届けるのか。
どんな情報を集めるのか。
何を残し、何を削るのか。
どの順番で伝えるのか。
そして、その情報にどんな価値があるのか。
そうしたことを考える仕事でした。
最近、経営もそれに近いのではないかと思うようになりました。
経営者のもとには、毎日さまざまな情報が集まります。
市場の変化。
顧客の声。
売上や利益。
新しい技術。
人との出会い。
事業の課題。
そのすべてに対応することはできません。
何を重要だと考えるのか。
何を優先するのか。
何をやらないのか。
どの情報を組み合わせて、次の行動につなげるのか。
これも、ある意味では編集です。
経営とは、現場から得た情報を編集し、次の意思決定につなげることでもある。
そう考えると、出版で培った経験が、今の経営に生きていることがよく分かります。

小さな会社だからこそ、編集する力を持ちたい

小規模事業者が大手と同じ戦い方をしても、簡単には勝てません。
広告費も違います。
人員も違います。
知名度も違います。
でも、小さな会社には小さな会社の強みがあります。
経営者自身が現場に立てる。
お客様の声を直接聞ける。
市場の変化をすぐに感じられる。
考えたことを、その日のうちに発信できる。
そして、必要であれば翌日から行動を変えられる。
この強みを、メディアとAIによってさらに大きくできるのではないかと思っています。
大切なのは、情報をたくさん持つことだけではありません。
情報から何を読み取り、どう判断し、何を実行するのか。
その力を会社の中に蓄積していくことです。
これからの小規模事業者にとって、ひとつの生き残り方になるのではないでしょうか。

メディアに取り組んだからこそ、見えてきた世界

振り返ってみると、最初から「編集する経営」を目指していたわけではありません。
ブログを書き続けてきた。
市場を観察してきた。
お客様と話してきた。
その経験を整理し、判断基準をつくってきた。
そしてAIという新しい道具にも出会いました。
ひとつひとつ取り組んできたことが、少しずつつながってきたのです。
メディアを育てた結果、メディアを超えた経営の形が見えてきた。
これが、今の率直な感覚です。
出版業界を離れてから、ずいぶん時間が経ちました。
でも、あの頃に経験したことが、今になって新しい形で生きている。
それは、とても嬉しいことです。
これからも現場に立ち、市場を観察し、情報を編集し、判断基準を磨いていきたいと思います。
そして、その積み重ねを会社の知識に変えていく。
出版から中古車買取へ。そして、編集する経営へ。
これまで歩んできた道が、ようやくひとつにつながってきたように感じています。

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