お盆休み明け、中古車相場はどう動くのか|為替介入後の「最初のオークション」に注目しています

中古車の査定をしていると、
「少し待ったら高くなりますか?」
「今売ったほうがいいですか?」
と聞かれることがあります。
もちろん未来の相場を正確に当てることはできません。
ただ、市場がどちらへ向かおうとしているのか。その材料を集めることはできます。
そして今、私がかなり注目しているのが、お盆休み明けの中古車オークションです。

理由があります。
7月末に為替が大きく動いたからです。

164円近辺から157円前後へ

7月末まで、ドル円は1ドル164円近辺まで円安が進んでいました。
中古車輸出にとって、円安は基本的には追い風です。
海外のバイヤーが同じドル予算を持っていたとしても、
円安になれば日本のオークションでより高い金額まで応札できます。

ところが7月末、為替介入によって流れが大きく変わりました。
ドル円は164円近辺から157円前後へ。
約7円の円高です。
「たった7円」と思うかもしれません。

でも、輸出業者からすると無視できません。
仮に1万ドルなら、単純計算で約7万円。
5万ドルなら約35万円。高額な輸出車ほど影響は大きくなります。
もちろん実際の買付価格は為替だけでは決まりません。
それでも、これまで「円安が続く」という前提で買っていた輸出業者が、
買付上限を見直す理由としては十分です。

ところが、その直後にお盆休みが来る

ここが今回の面白いところです。
為替が大きく動いた直後に、中古車業界がお盆休みに入ります。
オークションも休催が増えます。
つまり、
為替は変わった。
でも、
新しい為替水準を織り込んだ相場が、まだ十分に形成されていない。
そんな状態で市場が一度止まることになります。
だから私は、休み前の高値事例をそのまま休み明けの査定根拠にするのは少し危険だと考えています。

相場を見るなら「高値」より「成約率」

もう一つ、気になっている数字があります。
USSの2026年7月の平均成約単価は134.5万円。
前年を上回る高い水準です。
これだけを見ると、
「中古車相場はまだ強い」
と判断したくなります。

確かに、それ自体は間違いではありません。
ただ、同じ7月の成約率を見ると63.8%。
前年の65.9%から下がっています。
さらにUSS東京では、7月9日に64.8%だった成約率が、8月6日には61.9%まで低下しました。
私はこういうとき、最高値よりこちらの数字を見ます。

なぜなら、
高く売れた車は目立ちますが、売れなかった車は目立たないからです。
相場の変化は、最高値が下がる前に「買わない車が増える」という形で表れることがあります。
輸出業者が買付金額を下げれば、今までギリギリ成約していた車が流札する。

だから、成約率や流札車を見ることは、市場の少し先を考えるうえで大切です。

「輸出が強い」も一括りにはできない

もう一つ、今の中古車市場を見るうえで欠かせないのが輸出先です。
現在、日本の中古車輸出ではロシアとタンザニアが非常に強くなっています。
一方、UAE向けは大きく減っています。
ただし、ここでも数字だけを見てはいけません。
「UAEで日本車の人気がなくなった」
とは限らないからです。
UAEは日本車の大きな消費地であると同時に、
アフリカ、中東、中央アジアなどへ車を送る物流ハブでもあります。

現在は中東情勢の影響から、船便、戦争保険、港湾、航路などに大きな負担がかかっています。
買いたい人がいても、運ぶコストが高すぎれば高く買えません。
ここは意外と知られていないところです。

円安は追い風。でも物流は逆風

中古車輸出について、
「円安だから車は高く売れる」
と言われることがあります。
半分正解で、半分間違いです。
円安は確かに追い風です。
しかし同時に、船賃、戦争保険料、燃料費、港湾コスト、輸送日数、在庫期間。

こうしたコストも輸出業者は負担しています。
だから大切なのは、
為替だけを見ることではありません。
輸出業者は、
「この車をいくらで買えるか」
ではなく、
「この車を現地まで運んで、最終的にいくら利益が残るか」
を計算してオークションで応札しています。
円安でも物流コストが上がれば、買付価格が上がらないことはあります。

査定は「直近の相場」を見るだけではない

中古車査定というと、
過去のオークションデータを検索して、
「同じ車が100万円で売れているから、この車も100万円」
と計算しているように思われるかもしれません。
もちろん過去のデータは重要です。
でも、それだけでは足りません。

私は、為替、輸出先、物流、世界情勢、成約率、応札状況、再出品された車。

こうしたものも見ています。なぜなら、査定で知りたいのは、
「昨日いくらだったか」だけではないからです。
これからこの車を仕入れて、売却するまでの間に市場がどう動きそうなのか。
そこまで考えて、今日の買取価格を決めます。

だから、お盆休み明けのオークションを見る

今回、私が注目している流れは非常にシンプルです。

円安が進む7月末に為替介入164円近辺から157円前後へ円高輸出業者の採算が変わる
その直後にお盆休みオークションの価格形成が一時止まる休み明け、輸出業者はいくらで買うのか

ここです。

休み明け最初のオークションで、
成約率はどうなるのか。
輸出向け車の応札は減るのか。
高額SUVはどこまで買われるのか。
ロシア向けや東アフリカ向けは引き続き強いのか。
流札した車は、次回いくらで再出品されるのか。
このあたりを見れば、次の相場の方向が少しずつ見えてくると思います。

相場は「点」ではなく「流れ」で見る

これは中古車だけの話ではありません。
市場を見るとき、一つのニュースだけで判断すると間違えやすくなります。
円安だから上がる。
戦争だから下がる。
輸出が増えたから上がる。
そんなに単純ではありません。

世界情勢が変わる。為替が動く。
物流コストが変わる。輸出業者の採算が変わる。
オークションでの買い方が変わる。
そして最後に、査定価格へ反映される。
全部つながっています。
だから大切なのは、「今いくらか」だけを見ることではなく、

なぜ今その価格なのか。そして、その流れがどちらへ向かっているのか。

そこまで考えることだと思っています。

今日の判断基準

今回の市場から、車を売る方にも知っておいていただきたいことがあります。
「直近で高く売れた車がある」ことと、「今日もその価格で売れる」ことは同じではありません。
市場は常に動いています。
特に今回のように、為替介入があり、物流リスクがあり、
その途中で長期休暇を挟むときは、
過去の高値だけで判断しないことが大切です。
休み明けの市場が、どんな答えを出すのか。

私もオークションを注意深く観察していきます。
そして、その変化を査定の現場でお客様にお伝えしていきたいと思っています。

査定とは、昨日の相場を当てはめる仕事ではなく、明日の買い手がいくらまで出せるのかを考えながら、今日の価格を決める仕事です。

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