中古車相場はまだ高い。でも「前に高く売れた」は当てにならない理由

「中古車相場は、まだ高いんですか?」
査定の現場でも、こうした質問をいただくことがあります。

結論から言えば、2026年9月現在、中古車相場はまだ高い水準にあります。ただし、私は最近、「相場が高いから、この車も高く売れる」と単純には考えないほうがいいと思っています。
その理由が、8月の中古車オークションの数字にはっきり表れています。

8月の中古車市場は「高い。でも全部が売れるわけではない」

中古車業界の大きな指標のひとつが、USSオークションのデータです。
2026年8月は、出品254,517台、成約169,966台、成約率66.8%、平均成約単価124.8万円でした。
ここで注目したいのが「成約率」です。
7月の63.8%から8月は66.8%へ戻りました。しかし、前年8月は69.6%でした。

一方、平均成約単価は124.8万円と、前年を上回る水準を維持しています。
つまり今の中古車市場は、「安くなって売れなくなった」という状態ではありません。
価格はまだ高い。でも、買い手は車を選んでいる。
私は今の市場を、そんな状態だと見ています。

「3カ月前に○○万円だった」が危険な理由

車の相場を調べるとき、過去に同じような車がいくらで売れたかを見るのは非常に重要です。
私も査定では、同じ車種、年式、走行距離、グレード、評価点などのデータを比較します。
ただし、ここで最近特に気をつけていることがあります。
「いくらで売れたか」と同時に、「いつ売れたか」を見ることです。

例えば、まったく同じような車が7月に高く売れていたとしても、その価格が9月にも通用するとは限りません。
車の状態が変わったわけではありません。
変わっているのは、その車を買う側の環境です。

円高になると、海外の買い手が出せる金額も変わる

日本の中古車は世界中へ輸出されています。
そのため、中古車相場と為替は無関係ではありません。
今年7月には1ドル164円近辺まで円安が進んだ時期がありましたが、9月には153円近辺まで円高方向へ動く場面がありました。

仮に海外の業者が、ある日本車に1万ドルまで出せるとします。
1ドル164円なら164万円。
1ドル153円なら153万円。
単純計算では11万円の差になります。

もちろん、実際の中古車価格は為替だけで決まるわけではありません。それでも、海外へ輸出される車ほど、為替が買い手の仕入れ価格に影響することは理解しておいたほうがいいでしょう。
だから「少し前にこの車が160万円で売れているから、今回も160万円」という見方には注意が必要なのです。

もう一つ大切なのが「その車は、今どこへ行くのか」

最近、私が査定で為替以上に考えるようになったことがあります。
それが、車の「出口」です。
日本で買い取られた中古車は、すべて国内で販売されるわけではありません。
UAEなどの中東へ行く車もあれば、ロシア・中央アジアへ行く車もあります。タンザニアやケニアなど東アフリカへ行く車もあります。パキスタンなど南アジアで需要が生まれる車もあります。
そして面白いのは、同じ「輸出向けの車」でも、見るべきものがまったく違うことです。

UAE・中東なら、現地での人気だけでなく物流や輸送コスト。
ロシア・中央アジアなら、日本から輸出できる車なのかという規制。
東アフリカなら、耐久性や修理のしやすさ、商用利用などの現地需要。
パキスタン・南アジアなら、中古車輸入をめぐる制度変更。
つまり、「海外で人気だから高い」という説明だけでは足りないのです。

昨日まであった「出口」が、今日もあるとは限らない

中古車相場を見ていて面白いのは、車そのものは何も変わっていないのに、価格が変わることです。
なぜでしょうか。
それは、買い手が変わるからです。
為替が変わる。輸出規制が変わる。船賃が変わる。海外の制度が変わる。現地の需要が変わる。
すると輸出業者が日本のオークションで出せる金額も変わります。
その結果、オークション相場が変わり、最終的には私たち買取店の査定価格にも影響します。

だから私は最近、査定データを見るときに、
「この車はいくらで売れたのか」
だけではなく、
「誰が、なぜこの金額まで出したのか」
を考えるようにしています。

そしてもう一つ。
「その買い手は、今日も同じ金額を出せるのか」
ここまで考えます。

車を売る人も「最高値」だけを見なくていい

こうした市場だからこそ、車を売る方にも知っておいてほしいことがあります。
ネットで過去の買取価格を見たり、知人から「この車は○○万円で売れた」と聞いたりすることがあると思います。
もちろん、それらも参考になります。
でも、それはあくまでその時点での価格です。
特に海外需要の影響を受けやすい車は、数カ月前の価格が現在の価格を保証するものではありません。

逆に、国内では評価されにくいと思っていた古い車や走行距離の多い車が、海外に新しい出口を持つことで思った以上の価格になることもあります。
だから「高くなった」「安くなった」という市場全体の話だけで、売る・売らないを決める必要はありません。
大切なのは、自分の車の市場が今どうなっているかです。

今の中古車市場を見る3つの判断基準

いま車の売却を考えているなら、私は次の3つを確認するといいと思います。
1つ目は、「中古車相場が高いか」ではなく「自分の車が今も買われているか」。
市場平均が高くても、すべての車が同じように高いわけではありません。
2つ目は、「いくらで売れたか」だけではなく「いつ売れたか」。
数カ月前の高値を、現在の相場だと思わないことです。
3つ目は、「輸出向けか」ではなく「その車の出口が今日も機能しているか」。
海外で人気だった車でも、為替、物流、規制、制度が変われば買い手の出せる金額は変わります。

相場は「点」ではなく「流れ」で見る

中古車の価格を調べるだけなら、過去の落札データを見ることである程度できます。
でも、査定で本当に難しいのは、その数字をどう読むかです。
昨日150万円で売れたから、今日も150万円。
そんな単純な市場ではありません。
その150万円を出した買い手は誰だったのか。なぜそこまで出せたのか。そして今日も同じ条件なのか。
私はそこまで考えて、査定金額を決めたいと思っています。
相場は「点」ではなく「流れ」で見る。
そして車を売る方にも、単に「いくらで売れるか」だけではなく、
「なぜ今この価格なのか」
まで知ったうえで、売るか、待つかを判断してもらいたい。
それが「後悔しない車の売り方」につながると思っています。

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