市場を見る人 #2|「アルファード価格下落」のニュース。本当に相場は崩れているのか?

先日、アルファードの中古車価格が下落しているというニュースを見ました。
記事の見出しには「在庫は5倍超」という言葉もありました。
アルファードといえば、少し前まで中古車が新車価格を上回ることもあった車です。
それが今度は「価格下落」。
これだけを見ると、「アルファードの相場が崩れてきたのではないか」と感じる人もいると思います。
でも、私はこういうニュースを見ると、もう少し市場を見てみたくなります。
本当にアルファードの相場は崩れているのでしょうか。

「在庫5倍」の数字は何を表しているのか

まず確認しておきたいのが、ニュースで紹介されていた「在庫」の意味です。
記事では、中古車検索サイトに掲載されているアルファードの台数が、2年前の約400台から現在は2313台まで増えたと紹介されていました。
これは、日本全国に存在するアルファードの中古車在庫すべてを数えた数字ではありません。
一方で、だから意味がないということでもありません。
中古車検索サイトは、多くの販売店が販売車両を掲載しています。
そこで掲載台数がこれだけ増えているのであれば、消費者から見えるアルファードの選択肢が大幅に増えていることを示す一つの指標にはなります。
以前は、欲しくても車がない。
今は、複数の車から比較して選べる。
この変化は大きいと思います。

なぜアルファードはあれほど高くなったのか

そもそも、少し前のアルファード市場はかなり特殊でした。
新車への注文が集中し、受注停止になる時期もありました。
欲しい人はたくさんいる。
しかし、新車が買えない。
すると需要の一部が中古車市場へ向かいます。
ところが、中古車の台数も限られている。
需要に対して供給が極端に少なくなれば、価格は上がります。
結果として、市場に出たばかりの中古車が非常に高い価格で取引され、中には新車価格を上回るケースまで出てきました。
アルファードという車そのものの価値が突然何百万円も上がったというより、供給不足によって強いプレミアムが発生していたと考えるほうが自然です。

今は「選べる市場」になってきた

その状況が変わってきています。
中古車検索サイトへの掲載台数が増えれば、買う側には選択肢が生まれます。
同じアルファードでも、年式、グレード、色、走行距離、装備、価格を比較できる。
一台しかなければ、その一台を買うしかありません。
10台あれば比較できます。
100台あれば、さらに条件を選べます。
買い手が選べるようになれば、売り手側も以前のような強気な価格だけでは売りにくくなります。
そう考えれば、中古車販売価格が下がってくること自体は不思議ではありません。
では、これは「相場崩壊」なのでしょうか。

実際のオークション市場を見てみる

そこで、直近の中古車オークションのデータも見てみました。
今回はアルファードハイブリッドを中心に、7月末から9月初めまでの落札結果を追っています。
たとえば、令和8年式のアルファードHV G、走行距離がほぼ伸びていない車両。
7月28日、8月4日、8月18日のUSS横浜会場で、条件の近い車両を複数台確認しました。
もちろん、同じ「G」でも色や装備、車両状態などが違うため、単純に比較することはできません。
それでも時系列で追ってみると、少なくとも今回確認した範囲では、7月末から8月にかけて落札相場が一直線に崩れているようには見えませんでした。
8月中旬にも市場が強く反応している車両があります。
ニュースで「中古車価格下落」と聞いた印象と、実際の業者間市場を見たときの印象には、少し違いがあります。

9月のデータを見ると、さらに違いが見える

9月1日のオークションでも、令和8年式のアルファードハイブリッドを複数確認しました。
ここで注意したいのが、グレードや駆動方式の違いです。
同じアルファードハイブリッドでも、GとZでは条件が違います。
さらに2WDと4WDをそのまま比較して、前回より高い、安いと判断することもできません。
実際、9月のデータでもグレードや仕様によって市場の反応にはかなり差がありました。
一方で、新しい年式で走行距離の少ない車両には、引き続き強い反応も確認できます。
つまり、「アルファード」という車種名だけを見て、相場全体が一方向に動いていると考えるのは難しいということです。

「価格が下がる」と「相場が崩れる」は違う

ここが今回、一番面白いところです。
ニュースで報じられている「価格下落」と、オークション市場で起きていることは、必ずしも矛盾していません。
以前のアルファードは、供給不足によって非常に強いプレミアムが発生していました。
それが、流通する車が増え、消費者が比較できるようになってきた。
すると、異常に高かった価格は当然調整されます。
受注停止・供給不足。
中古車へ需要が集中。
中古車価格が急騰。
一部では新車価格を上回る。
その後、流通量が増える。
買い手が比較できるようになる。
プレミアムが薄れる。
価格が本来の需給に近づいていく。
こう考えると、現在起きていることが見えやすくなります。
これは「アルファードの人気がなくなった」という話でもなければ、「中古車相場が崩壊した」という話でもない。
異常だった市場が、少しずつ調整されてきた。
私は今のところ、そう見るほうが実態に近いのではないかと思っています。

ニュースの数字を否定する必要はない

ここで大事なのは、「在庫5倍」というニュースを否定することでもありません。
中古車検索サイトへの掲載台数が約400台から2313台まで増えたのであれば、それは市場を見るうえで意味のある情報です。
ただし、一つの数字だけで市場全体を判断しないことです。
検索サイトへの掲載台数。
店頭の販売価格。
実際に売れた価格。
業者間オークションの落札価格。
出品台数。
応札の強さ。
それぞれ見ている市場の断面が違います。
複数の数字を重ねていくと、初めて市場の立体的な姿が見えてきます。

アルファードに乗っている方へ

アルファードに乗っている方にとって、「中古車価格下落」というニュースは気になると思います。
でも、
「ニュースで下がったと言っていたから、自分のアルファードも大きく下がった」
とすぐに考える必要はありません。
同じアルファードでも、年式、グレード、2WD・4WD、走行距離、色、装備、状態によって市場の評価は違います。
さらに、相場は常に動いています。
大事なのは「アルファードが上がっているか、下がっているか」という大きな話だけではありません。
自分が乗っているアルファードが、今の市場でどう評価されているのか。
そこまで確認して、初めて売るか、まだ乗るかという判断ができます。
ニュースは、市場を知るための大切な入口です。
でも、ニュースの見出しだけで自分の車の価値まで決めない。
市場をもう一段深く見ることで、判断は変わることがあります。
この連載では、これからもニュースや実際のオークションデータを行き来しながら、中古車市場で何が起きているのかを観察していきたいと思います。

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