市場を見る人 #1|平成9年CR-Vが30年近く経っても強く反応する理由

中古車オークションを毎日のように見ていると、
ときどき「なぜこの車に、これだけ反応するのだろう」と思う車に出会います。
先日ウォッチしていたのが、平成9年式のホンダCR-Vでした。
走行距離は約4.9万km。4WD。評価点3.5点。
平成9年ですから、もう30年近く前の車です。
ところがオークションが始まると、市場は強く反応しました。
応札は99。
国内の一般的な感覚だけで考えれば、「30年近く前の古いSUV」です。
しかし、市場はそう評価していない。
ここが中古車市場の面白いところです。

「古い車」というだけでは価値は決まらない

車の価値を考えるとき、多くの人はまず年式を見ます。
新しい車は高い。
古くなるほど安くなる。
基本的にはその通りです。
しかし、中古車市場を見ていると、それだけでは説明できない車がたくさんあります。
今回のCR-Vもその一台です。
30年近く経過しているにもかかわらず、多くの買い手が反応した。
ということは、その車を「欲しい」と考えている人がいるということです。
中古車の価値は、年式だけでは決まりません。
今、その車を必要としている人がいるか。
ここを見る必要があります。

古いSUVには別の価値がある

今回のCR-Vで考えられるのが、海外需要です。
古い日本製SUVには、現在の日本市場とは違った評価軸があります。
シンプルなガソリン車であること。
4WDであること。
日本車であること。
比較的コンパクトなSUVであること。
修理や部品調達をしながら長く使える可能性があること。
特にアフリカなど、日本から中古車が多く輸出される市場では、必ずしも「新しい車」が一番求められるとは限りません。
現地でどう使えるか。
維持できるか。
道路事情に合っているか。
そうした実用性も重要になります。
今回の落札先を確認できているわけではないので、海外向けと断定することはできません。
ただ、これだけ古いSUVに多くの応札が入ったという事実から、国内需要だけではない可能性も考えておく必要があります。

「希少だから高い」でもない

もう一つ大事なのが、希少性です。
30年近く経過すれば、同じ条件の車は当然少なくなります。
今回のCR-Vは走行距離も約4.9万km。
年式を考えれば、かなり少ない走行距離です。
では、希少な車はすべて高くなるのでしょうか。
そうではありません。
これは最近、別のオークションを見ていても感じたことです。
希少だから多くの人が反応する車もあれば、希少なのにほとんど反応されない車もある。
違いは何か。
その希少性に、今のニーズが重なっているかどうかです。
珍しいだけでは市場価値にはなりません。
珍しくて、なおかつ欲しい人がいる。
そのとき初めて、希少性が価格に反映されます。

相場表だけでは見えないものがある

私は車の査定をするとき、過去の落札価格をもちろん確認します。
しかし、過去の数字だけを並べても、現在の市場を完全に理解することはできません。
今回のCR-Vでいえば、
「平成9年式だからこのくらい」
という見方だけでは、おそらく市場の反応を読み切れません。
何人が応札しているのか。
どんな車に反応が集まっているのか。
国内で売れそうなのか。
海外に出口がありそうなのか。
似た車の相場は最近どう動いているのか。
こうしたことを観察していく必要があります。
過去の落札価格を覚えることと、市場を見ることは、似ているようで違います。

古いCR-Vに乗っている方へ

今回、一番伝えたいのはここです。
古いCR-Vに乗っている方は、
「こんなに古いから、もう値段なんてつかないだろう」
と最初から決めつけないでほしいと思います。
年式が古くても、海外需要があるかもしれない。
走行距離が少なければ評価されるかもしれない。
4WDであることが強みになるかもしれない。
そのときの市場によって、評価は変わります。
もちろん、古いCR-Vなら必ず高く売れるという話ではありません。
状態、走行距離、グレード、駆動方式などによっても違います。
だからこそ、年式だけを見て判断しないことです。
売却するにしても、まだ乗り続けるにしても、まず現在の市場で自分の車がどう評価されているのかを確認する。
そのうえで決めればいいと思います。

「市場を見る人」を始めます

今回から、このブログで「市場を見る人」という連載を始めます。
中古車オークションを見ていると、毎日のように小さな発見があります。
なぜ、この車にこれほど応札が入るのか。
なぜ、先月まで強かった車が急に弱くなったのか。
なぜ、古い車なのに高いのか。
なぜ、人気車なのに反応が鈍いのか。
その一台の後ろには、国内需要、輸出、為替、物流、希少性、そして人の心理があります。
この連載で届けたいのは、「この車はいくら」という相場情報だけではありません。
相場を教えるのではなく、相場の見方を伝える。
実際の市場を観察しながら、そこから見えてきたことを一つずつ言葉にしていきます。
それが、車を売るときの判断基準にもつながると思っています。

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