「輸出向けだから高い」はもう通用しない。中古車査定で見るべき4つの海外市場
中古車の査定をしていると、「この車は輸出向けですよね?」と聞かれることがあります。
確かに、日本の中古車相場は海外需要から大きな影響を受けています。でも最近、私は「輸出向け」という言葉だけでは、市場を説明できなくなっていると感じています。
なぜなら、どこの国へ輸出されるのかによって、今起きていることがまったく違うからです。
UAE・中東。ロシア・中央アジア。東アフリカ。パキスタン・南アジア。
今回は、私が査定のときに特に注目している4つの海外市場について整理してみます。
UAE・中東|「人気があるか」より「運べるか」
まずUAE・中東です。日本の中古車輸出を考えるうえで、UAEは非常に重要な国です。
ただし、UAEは単なる最終消費地ではありません。日本から運ばれた中古車がUAEを経由して、アフリカ、中東、中央アジアなどへ再輸出されることもあります。つまり、世界の中古車流通における「ハブ」のような役割があります。
ところが現在、この地域で大きな問題になっているのが物流です。ホルムズ海峡をめぐる緊張によって船舶の通航が減少し、海運会社が迂回航路を利用するケースも出ています。
さらに、船賃、戦争保険、航路変更、港湾での滞留、輸送日数。こうしたコストも考えなければなりません。
ここで重要なのは、海外でその車を欲しい人がいることと、輸出業者がその車を高く買えることは別ということです。
例えば海外で100万円で売れる車があるとします。運ぶためのコストが20万円なら利益が出ても、物流コストが40万円、50万円と増えれば、日本での仕入れ価格を下げなければ採算が合わなくなります。
だから現在のUAE向け車を見るとき、私は**「需要があるか」より「運べるか」。さらに「運べても利益が残るか」**を意識しています。
高額SUVや大型車だから海外で人気。それだけで強気の査定をするのは危険な局面です。
ロシア・中央アジア|「人気があるか」より「輸出できるか」
一方、現在かなり強いのがロシアです。2026年上半期、日本からロシアへ輸出された中古車は大きく増え、日本中古車の主要な仕向国になっています。
この数字だけを見ると、「ロシア向けは強い」と言いたくなります。でも、ここにも注意点があります。
日本はロシア向け自動車輸出に規制を設けています。そのため、ロシアで人気がある車=日本から輸出できる車ではありません。
排気量、パワートレーン、車両の条件、輸出ルート。こうした条件を確認する必要があります。
つまり、査定するときに重要なのは「ロシア市場が強いか」ではありません。
「この車が、今のロシア・中央アジア市場の買付対象になるのか」です。
ここを間違えると、「ロシアで人気だから」という理由だけで過去の高値を追ってしまう可能性があります。「ロシア向け」という言葉だけで一括りにしないことが重要です。
東アフリカ|日本国内とは違う価値がつく
今年、私が特に注目しているのが東アフリカです。中でもタンザニア向けの日本中古車輸出は大きく伸びています。ケニアや南アフリカも、日本中古車にとって重要な市場です。
ここが面白いのは、日本国内とは車の評価軸が違うことです。
例えば、トヨタ車、商用車、SUV・4WD、現地で修理しやすい車、部品供給が豊富な車、耐久性に定評がある車。こうした車は、日本国内とは違う需要を持っています。
日本では「走行距離が多い」という理由で評価が低くなる車でも、海外ではまだ十分に商品になることがあります。逆に、日本で人気のある装備やグレードが、そのまま海外でも高く評価されるとは限りません。
つまり、日本国内の中古車として見るのか、海外で使われる商品として見るのか。 同じ車でも、見る角度によって価値が変わります。
これが中古車輸出の面白いところです。
査定の現場でも、「古いから安い」「走行距離が多いから価値がない」と単純には判断できません。その車を必要としている市場が世界のどこかにあれば、国内相場とは違う価格がつくことがあります。
パキスタン・南アジア|「今の台数」より制度を見る
そして、これから注目しているのがパキスタンです。
現時点では、ロシアや東アフリカほど日本中古車の大きな仕向国ではありません。ただし、パキスタンを見るときに重要なのは現在の輸出台数ではないと考えています。
制度です。
パキスタンでは中古車の商業輸入をめぐる制度変更が進んでいます。もし輸入条件が緩和されれば、日本中古車にとって新しい出口が広がる可能性があります。
ただし、制度が変わった=翌日から日本の中古車相場が上がるわけではありません。
制度が変わる → 現地の輸入業者が採算を計算する → 日本のオークションへ買いに来る → 応札が増える → 落札価格が変わる → それが買取相場へ反映される。
ここまでには時間があります。
だから私は、制度変更のニュースを見てすぐに相場判断を変えるのではなく、実際にオークションで買い手の行動が変わったかを見るようにしています。
同じ「輸出」でも、見るべきものが違う
4つの市場を並べると、違いがよく分かります。
UAE・中東で見るのは、物流と採算。
ロシア・中央アジアで見るのは、規制と輸出可否。
東アフリカで見るのは、現地需要と車種適性。
パキスタン・南アジアで見るのは、制度変更と、その後の実際の買い。
全部「中古車輸出」の話ですが、確認すべきポイントはまったく違います。だから最近、私は「輸出車」という言葉だけで説明するのは少し粗いと思っています。
査定で見るのは「輸出人気」ではなく「出口の確実性」
中古車の査定では、過去のオークション相場を確認します。でも、それだけでは十分ではありません。
例えば先月まで150万円で落札されていた車があったとしても、その価格を作っていた海外バイヤーが今も買っているとは限りません。
物流が止まったかもしれない。規制が変わったかもしれない。為替が変わったかもしれない。現地の税制が変わったかもしれない。別の国の需要が急に強くなったかもしれない。
だから見るべきなのは、「過去にいくらで売れたか」だけではなく、「今日もその出口が機能しているか」。
だと思っています。
世界の変化は、査定価格までつながっている
海外で何かが起きても、日本で車を売る人には関係ないように見えるかもしれません。
でも実際には、
世界情勢 → 物流・規制 → 輸出業者の採算 → オークションでの応札 → 中古車相場 → 査定価格
という流れでつながっています。
だから私は、車を査定するときに世界のニュースも見ています。
世界情勢を予想したいわけではありません。世界で起きた変化が、中古車市場の買い手の判断をどう変えるのか。 そこを知りたいからです。
今日の判断基準
「この車は輸出で強いです」
それだけでは、判断材料としては足りなくなっています。
大切なのは、どこの国が買うのか。なぜその国が買うのか。今も輸出できるのか。運んでも利益が残るのか。そして、その買い手が今日もオークションにいるのか。
中古車の価値は、日本国内だけで決まっているわけではありません。
だからこそ、
「輸出向けかどうか」ではなく、「その車の出口が、今も機能しているか」。
これが、今の中古車相場を見るうえで大切な判断基準だと考えています。











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