同じ「輸出車」でも見るべきものは違う|中古車相場を4つの海外市場から考える
中古車の査定をしていると、「この車は輸出向けです」という説明をすることがあります。
でも最近、この「輸出向け」という言葉だけでは、かなり粗いと感じるようになりました。
なぜなら、同じ輸出車でも、どこの国が買っているのかによって、
相場を見るポイントがまったく違うからです。
UAE・中東なら物流。ロシア・中央アジアなら規制。東アフリカなら現地需要。
パキスタン・南アジアなら制度。
そして7月の中古車輸出実績を見ると、この違いがかなり鮮明になっています。
7月の輸出台数を見ると「出口」の違いが見えてくる
7月の普通乗用車の中古車輸出を見ると、ロシアが20,992台で1位、タンザニアが8,236台で2位、ケニアも4,101台で上位に入っています。
軽自動車でも、ロシア2,847台、パキスタン945台、タンザニア929台、ケニア681台。
こうして数字を見ると、日本の中古車が世界中のさまざまな市場へ流れていることが分かります。
ただし、大切なのは輸出台数の多さだけではありません。
なぜ、その国が日本の中古車を買っているのか。
さらに、
その買いが今後も続く条件は何なのか。
ここまで考えると、中古車相場の見え方が変わってきます。
UAE・中東|見るべきは「人気」ではなく物流
UAEは長く、日本中古車にとって重要な輸出先であり、周辺国への再輸出拠点でもあります。
だから高額SUVなどを見ると、「中東で人気があるから強い」と考えたくなります。
でも現在の中東市場を見るうえで、私は人気以上に物流を重視しています。
ホルムズ海峡をめぐる緊張が続けば、船舶の通航、船賃、戦争保険、輸送日数などに影響します。
ここで重要なのは、
欲しい人がいることと、高く仕入れられることは同じではない。
ということです。
海外で高く売れる車でも、そこまで運ぶコストが増えれば、輸出業者が日本のオークションで出せる金額は下がります。
だからUAE・中東向けの車を見るときは、「海外人気車」という言葉だけでは足りません。
今日、その車を問題なく運べるのか。運んだあとに利益が残るのか。
ここまで見て、初めて「輸出で強い」と判断できます。
ロシア・中央アジア|見るべきは「需要」ではなく規制
一方、7月の普通乗用車輸出で最も多かったのがロシアです。
20,992台という数字を見る限り、日本中古車に対する需要はかなり大きいことが分かります。
ただ、ロシアについても「需要が強いから高い」だけでは判断できません。
日本はロシア向け自動車輸出に規制を設けています。
つまり、
ロシアで欲しい人がいることと、日本からその車を輸出できることは別です。
排気量、パワートレーン、車両条件などによって状況は変わります。
だから査定で見るべきなのは、「ロシア市場が強いか」ではありません。
この車が、今のロシア・中央アジア市場で実際に買付対象になっているか。
ここが重要です。
過去にロシア向けで高く売れていた車でも、規制や流通ルートが変われば同じ価格が続くとは限りません。
東アフリカ|見るべきは「日本の評価」ではなく現地需要
7月の数字でもう一つ目立つのが東アフリカです。
普通乗用車ではタンザニアが8,236台で2位、ケニアも4,101台。軽自動車でも両国への輸出があります。
この市場の面白さは、日本国内とは車の評価基準が違うことです。
日本では年式が古い、走行距離が多いという理由で評価されにくい車でも、海外では別の需要があります。
耐久性がある。部品が手に入りやすい。現地で修理しやすい。仕事で使える。道路事情に合っている。
こうした理由から、国内市場とは違う価格がつくことがあります。
だから東アフリカ向けの車を見るときには、「日本ではいくらか」だけではなく、
現地でこの車が何のために使われるのか。
を考えます。
同じ10万kmの車でも、日本国内の10万kmと海外市場の10万kmでは評価が違うことがあります。
中古車の価値は、車そのものだけで決まるわけではありません。
誰が、どこで、何のために使うのか。
そこまで含めて市場価値になります。
パキスタン・南アジア|見るべきは「現在の台数」より制度
そして今後、注目しているのがパキスタンです。
7月の軽自動車輸出では945台。すでに一定の買いが確認できます。
ただ、パキスタンについて私が注目しているのは、現在の輸出台数以上に制度変更です。
中古車の商業輸入をめぐる規制や税負担が変われば、日本中古車にとって新しい出口が広がる可能性があります。
ただし、ここでも注意が必要です。
制度が変わったから、すぐに相場が上がるわけではありません。
制度が変わる。現地の輸入業者が採算を計算する。日本のオークションで買い始める。応札が増える。落札価格が変わる。そして買取相場へ反映される。
この順番があります。
だからニュースを見て、「パキスタン向けがこれから上がる」と先回りしすぎるのではなく、制度変更のあと、本当に買い手の行動が変わったかを確認することが重要です。
4市場を並べると、見るべきものがまったく違う
整理すると、とても分かりやすくなります。
UAE・中東=物流と採算
ロシア・中央アジア=規制と輸出可否
東アフリカ=現地需要と車種適性
パキスタン・南アジア=制度変更と、その後の実際の買い
すべて「中古車輸出」という同じカテゴリーに入ります。
でも、相場を動かす要因は違います。
だから「この車は輸出向けです」という説明だけでは、本当は足りません。
査定で知りたいのは「どこへ行く車なのか」
私が査定でオークションデータを見るときも、単に過去の落札価格を見るだけではありません。
例えば、直近で150万円の落札実績があったとします。
大切なのは150万円という数字だけではありません。
誰がその価格を出したのか。なぜ、その価格まで出せたのか。
国内小売なのか。ロシアなのか。東アフリカなのか。中東なのか。それとも別の市場なのか。
そしてもっと重要なのが、
その買い手が、今日も同じ価格を出せるのか。
ということです。
為替が変われば変わります。規制が変わっても変わります。物流が止まっても変わります。現地の制度が変わっても変わります。
だから過去の落札価格は、相場を見るための重要な材料ではありますが、それだけで未来の価格が決まるわけではありません。
「輸出向けだから高い」はもう通用しない
日本の中古車市場は、世界とつながっています。
世界情勢が変わる。物流が変わる。規制が変わる。海外需要が変わる。輸出業者の採算が変わる。オークションでの応札が変わる。そして日本国内の査定価格が変わる。
査定価格だけを見ると分かりませんが、その後ろには世界中の買い手の判断があります。
だから私は、「輸出向けだから高い」という言葉だけでは、市場を説明できなくなっていると思っています。
大切なのは、
どこの国が買うのか。
そして、
その国が今日も買える状態なのか。
です。
今日の判断基準
同じ「輸出車」でも、見るべきものは違います。
UAEなら物流。ロシアなら規制。東アフリカなら現地需要。パキスタンなら制度。
だから車を売るときも、「海外で人気の車だから高く売れる」という情報だけで判断しないほうがいいと思います。
見るべきなのは、
「輸出向けかどうか」ではなく、「その車の出口が、今日も機能しているか」。
さらに言えば、
昨日高く売れたかではなく、今日もその価格を出せる買い手がいるか。
中古車相場を読むということは、価格表を見ることではなく、その価格をつくっている買い手の判断を追いかけることなのだと思います。












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