小規模事業者の生き残り戦略としてのメディア

最近、査定でお会いするお客様が少し変わってきたように感じています。
「質がいい」と言うと、少し失礼な表現かもしれません。
お客様に良い、悪いがあるという話ではありません。
私が感じているのは、私たちの考え方をある程度理解したうえで、問い合わせをしてくださる方が増えているということです。
これは偶然ではないと思っています。
ブログを長く続けてきたことが、少しずつ効いてきているのではないか。
そして最近、メディア事業を考えるうえで、このことは非常に重要なのではないかと思うようになりました。

ブログを読んでから会う人が増えている

一般的に、企業がブログを書く目的のひとつは「集客」です。
検索からアクセスしてもらう。
会社を知ってもらう。
問い合わせにつなげる。
もちろん、それも大切です。
私自身も長くブログを書いてきましたし、実際にブログ経由の問い合わせもあります。
ただ、最近は「何人集められたか」よりも、その先にあるものに興味があります。
どんな人と出会えるようになったのか。
こちらのほうが重要なのではないかと思っています。
ブログには、私が普段考えていることをかなり書いています。
車の相場について。
査定について。
中古車市場について。
輸出について。
車を売るタイミングについて。
買取業界について。
そして最近は特に、「後悔しない車の売り方」というテーマで、価格だけではなく、車を売るときの判断基準について書いています。
「一番高い会社を探せばいい」とは考えていません。
無理に売る必要もない。
場合によっては、今は売らないほうがいいこともある。
査定額だけではなく、時間、安心、売却時期、その人自身の事情まで含めて考える。
そういう考え方を、かなりの量の文章で公開しています。
当然ですが、それを読んで「自分には合わない」と思う人もいるはずです。
それでいいと思っています。

メディアには「選別する力」がある

少し強い言葉ですが、私はメディアには「選別する力」があると思っています。
もちろん、お客様を上から評価するという意味ではありません。
価値観や判断基準が合うかどうかです。
とにかく最高値だけを追求したい人。
何十社でも比較したい人。
駆け引きを楽しみたい人。
そういう売り方を否定するつもりはありません。
それもひとつの判断です。
ただ、私たちが提供したいものとは少し違います。
一方で、
「自分の車が今どういう状態なのか知りたい」
「相場だけでなく、売り時についても相談したい」
「なぜこの査定額になるのか知りたい」
「急かされずに考えたい」
「納得してから売りたい」
そんな人とは、非常に相性がいい。
ブログを読んでもらうことで、お会いする前から、この確認がある程度できるようになります。
こちらがお客様を選別しているだけではありません。
お客様もブログを読んで、私たちを選別している。
この双方向の選別が、とても大切なのだと思います。

会ってから説明するのでは遅い

以前であれば、査定に伺ってから自分たちの考え方を説明していました。
私たちはこういう査定をします。
こういう考え方で金額を出します。
無理に売却を勧めることはありません。
相場にはこういう背景があります。
当然、説明には時間がかかります。
そして、そもそもの価値観がまったく違えば、どれだけ説明しても噛み合わないことがあります。
これはお互いにとってもったいないことです。
ところが、ブログを読んでから問い合わせをしていただければ、話はかなり変わります。
初対面なのに、すでにこちらの考え方を知っている。
場合によっては、何本も記事を読んでくださっています。
すると、査定の時間を「自分たちを理解してもらう時間」ではなく、その人の車と、その人の判断について考える時間に使えるようになります。
これは大きな違いです。

小規模事業者には時間がない

なぜ私がこのことを重要だと思うのか。
理由は単純です。
小規模事業者には、時間がないからです。
人も限られています。
使えるお金も限られています。
1日に会える人数も限られています。
大企業のように大量の広告を出して、大量の問い合わせを集め、その中から成約する人を探すという戦い方が、必ずしも正解ではありません。
100人から問い合わせをもらうことより、考え方を理解してくれている10人と出会うほうがいい場合もあります。
むしろ小さな会社ほど、
誰と会うのか。
誰に時間を使うのか。
を考えなければいけないと思っています。
時間は、小規模事業者にとって最も重要な経営資源のひとつです。
すべての人に好かれる必要はありません。
すべての問い合わせを取りにいく必要もありません。
会うべき人と会う。
そうではない人とは、無理に接点をつくらない。
強い言い方ですが、これは小規模事業者が自分たちの価値を守りながら生き残っていくための戦略でもあると思っています。

「たくさん集める」とは違う戦い方

大きな会社と小さな会社が、同じ方法で戦う必要はありません。
資本も違う。
人員も違う。
広告予算も違う。
ブランドの認知度も違う。
であれば、小規模事業者は「量」だけで勝負するのではなく、別の戦い方を考える必要があります。
そのひとつが、自分たちでメディアを持つことだと思っています。
自分たちは何を考えているのか。
何を大切にしているのか。
何が得意なのか。
逆に、何をしないのか。
どんなお客様の役に立ちたいのか。
それを継続的に発信する。
広告で一瞬だけ自分たちの存在を知ってもらうのではなく、何本もの記事を通じて、考え方そのものを知ってもらう。
その蓄積は、大きな会社と同じ土俵で広告費を競わなくてもつくることができます。
時間はかかります。
しかし、時間をかけて蓄積した情報は、簡単には真似できない会社の資産になります。

発信とは「来てもらうこと」だけではない

発信というと、
認知を増やす。
アクセスを増やす。
フォロワーを増やす。
問い合わせを増やす。
どうしても「増やす」という方向で考えがちです。
でも、メディアの役割はそれだけではありません。
誰に来てもらうかを決めること。
同時に、
誰には来てもらわなくてもいいのかを伝えること。
これも発信の役割です。
だから、自分たちの考えを曖昧にして、誰にでも好かれる文章を書くことが必ずしも正しいとは思いません。
何を大切にしている会社なのか。
何をしない会社なのか。
どんな人の役に立ちたいのか。
どんな判断を良いと考えているのか。
そこまで発信する。
すると、アクセス数だけを見れば大きくならなくても、出会う人が変わっていく可能性があります。
私は最近、その変化を現場で感じ始めています。

メディア事業は小規模事業者の生き残り戦略

ブログは8年目に入りました。
これから私は、このブログをメディア事業の中核としてもっと大きくしていきたいと考えています。
ただし、単純にアクセス数を何倍にしたいということではありません。
もちろん、多くの人に読んでもらえればうれしいです。
でも、それ以上に大切にしたいことがあります。
会うべき人と会えるメディアにすること。
私たちの考え方を知ってもらう。
判断基準を公開する。
現場で見ているものを伝える。
できることも、できないことも伝える。
それを読んだうえで、
「この人に相談してみよう」
と思ってもらえる。
逆に、
「自分には合わないな」
と思う人には、問い合わせをしないという判断をしてもらう。
それでいい。
むしろ、その状態をつくることこそ、小規模事業者がメディアを持つ大きな意味なのではないかと思っています。
大企業と同じように大量の広告を出せなくてもいい。
大量の問い合わせを集めなくてもいい。
自分たちの考えを発信し、それに共感する人と出会う。
そして限られた時間を、会うべき人のために使う。
メディアは集客装置である前に、小規模事業者が「誰と仕事をするのか」を決めるための装置なのかもしれません。
8年間ブログを書いてきて、ようやくその力を実感し始めています。
そして、この力をもっと大きくしていくことが、これからの私たちのメディア事業です。

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