一件の査定を、一件の査定で終わらせない会社へ
毎日のように車を査定しています。
車を確認する。
オークションデータを見る。
市場を調べる。
お客様の話を聞く。
買取金額を決める。
成約することもあれば、成約しないこともあります。
普通に考えれば、一件の査定が終われば、その仕事は終了です。
でも最近、それではあまりにももったいないと思うようになりました。
一件の査定には、実はものすごい量の情報が含まれているからです。
査定が終わったあと、何が残っているか
例えば、ある車を100万円で査定したとします。
大切なのは「100万円を提示した」という結果だけではありません。
なぜ100万円だったのか。
どんな比較車両を見たのか。
国内需要なのか、輸出需要なのか。
オークションではどんな動きをしていたのか。
お客様は何を気にしていたのか。
他社はいくらだったのか。
最終的にお客様はどう判断したのか。
そして、その判断は正しかったのか。
これらはすべて、次の査定に使える情報です。
ところが、査定が終わった瞬間に次の仕事へ向かえば、その多くは担当者の頭の中に残ったままになります。
時間が経てば忘れてしまう。
人が辞めれば会社からなくなってしまう。
これでは、会社として経験したことになりません。
「経験が多い会社」と「学習している会社」は違う
ここに大きな違いがあると思っています。
年間1000台査定している会社があったとしても、その1000台を経験しただけなら、1000件の仕事をした会社です。
一方で、年間100台しか査定していなくても、
何が起きたのか。
なぜそうなったのか。
次は何を見るべきなのか。
そこまで振り返り、判断基準として残している会社なら、100回学習した会社になります。
経験量と学習量は同じではありません。
これからの車買取会社にとって、この違いはかなり大きくなるのではないかと思っています。
ベテランの「勘」で終わらせない
車買取業界には、経験豊富な人がたくさんいます。
車を見ただけで、
「これは輸出だね」
「この仕様は強い」
「この状態ならこのぐらい」
と判断できる。
素晴らしい能力です。
ただ、組織として考えると一つ問題があります。
なぜそう判断したのかを説明できなければ、他の人が使えない。
「あの人だから分かる」
「あの人に聞けば分かる」
という状態では、会社の能力ではなく個人の能力です。
だから、
「なぜ?」
を言葉にする必要があります。
経験を言語化する。
言語化したものを共有する。
そして、
「こういう場合には、ここを見る」
という判断基準まで落とし込む。
ここまでやって初めて、ベテランの経験が会社の資産になります。
AIで変えたいのは、ここ
私はAIに大きな可能性を感じています。
でも、一番期待しているのは文章を書いてもらうことでも、業務時間を短縮することでもありません。
現場の経験を、会社の知識に変換する速度を上げることです。
査定後の記録を整理する。
過去の類似事例を探す。
オークションデータと照合する。
失注理由を分類する。
お客様から受けた質問を蓄積する。
市場の変化との関連を考える。
そして、
「今回の経験から、どんな判断基準がつくれるか?」
を考える。
これまで人間だけでは時間がかかりすぎていた作業を、AIと一緒ならかなり高速化できる可能性があります。
昨日の経験を、今日の判断基準にする
そこで、私たちがこれから目指したいことを一つの言葉にしました。
昨日、一人が経験したことを、今日、全員の判断基準にする。
一人が査定で失敗した。
だったら、次の人は同じ失敗をしない。
一人がお客様から新しい質問を受けた。
だったら、次の日には全員が答えられる。
一人が相場の変化に気づいた。
だったら、その情報を全員の査定に反映する。
一人が良い説明方法を見つけた。
だったら、全員で使ってみる。
これができれば、一人ひとりがバラバラに経験を積む会社ではなくなります。
誰かが経験するたびに、会社全体が少し賢くなる。
そんな会社にしたいと思っています。
小さな会社には、小さいからできることがある
これは特に、小規模事業者にとって重要だと思っています。
大手には大量のデータがあります。
人もいます。
資金もあります。
システムもあります。
同じ条件で競争しても仕方ありません。
でも、小さな会社には意思決定の速さがあります。
今日気づいたことを、今日言語化する。
明日からやり方を変える。
うまくいかなければ、また変える。
学習の速度なら、小さな会社にも勝負できる余地があります。
むしろ人数が少ないからこそ、全員に共有するまでの距離も短い。
これは、小規模事業者の大きな武器になり得ます。
「教えてもらうFC」も変わっていくのではないか
この考え方を突き詰めていくと、フランチャイズのあり方についても考えさせられます。
従来は、
本部がノウハウをつくる。
加盟店が教えてもらう。
加盟店が実践する。
という構造が一般的でした。
でも、現場で最初に変化に気づくのは、本部とは限りません。
北海道と東京と沖縄では市場も違います。
お客様も違います。
競合も違います。
それぞれの加盟店が毎日経験していること自体が、大きな情報資産です。
ならば、
本部から加盟店へノウハウを渡すだけでなく、加盟店の経験をネットワーク全体の知識に変える。
そんなFCがあってもいい。
加盟店はノウハウを受け取るだけの存在ではなく、ノウハウをつくる側にもなる。
AIは、この仕組みを実現するためにも使えると思っています。
マニュアルを持つ会社から、マニュアルを更新できる会社へ
これからの時代、完成されたマニュアルを持っているだけでは足りないのかもしれません。
市場は変わります。
お客様も変わります。
テクノロジーも変わります。
今日の正解が、3年後も正解とは限りません。
だから必要なのは、
正しいマニュアルを持つこと以上に、マニュアルを更新し続けられる能力。
言い換えれば、
正解を知っている会社ではなく、正解が変わったことに早く気づける会社。
私は、そんな会社のほうがこれからは強いと思っています。
仕事をするほど、会社が賢くなる
私たちの会社では、AIを使って車買取に特化した組織学習の仕組みをつくっていきます。
査定をする。
記録する。
分析する。
言語化する。
共有する。
判断基準にする。
実践する。
検証する。
そして、また次の現場へ。
この循環を繰り返す。
目指しているのは、AIをたくさん使う会社ではありません。
仕事をすればするほど、会社が賢くなる仕組みを持った会社です。
一件の査定を、一件の査定で終わらせない。
一人の経験を、一人の経験で終わらせない。
一つひとつの仕事から学び、その学びを次のお客様への価値に変えていく。
昨日、一人が経験したことを、今日、全員の判断基準にする。
これからの小さな車買取会社に必要なのは、規模ではなく、この「学習する力」なのかもしれません。













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