情報を開示するほど、経営思想は深まっていく
情報を開示すると、何が起きるのでしょうか。
顧客から信頼される。新しい情報が集まる。仕事の相談が増える。
もちろん、それも大切な効果です。
しかし、私が日々ブログを書きながら感じているのは、もう一つの変化です。
情報を開示することで、自分自身の経営思想が深まっていく。
これは、長年発信を続けてきたからこそ実感していることです。
情報を隠すことが競争力になるのか
私は中古車の買取会社を経営しています。
中古車買取業界では、買取店が査定額を提示することは当たり前です。しかし、なぜその金額になるのか、その根拠まで詳しく説明する業者は決して多くありません。
オークション相場、国内需要、海外への輸出需要、為替、車両状態。中古車の価格は、さまざまな要因によって決まります。
ところが、お客様にはその仕組みが十分に伝わっていないことがあります。
情報を持っている業者と、情報を持っていないお客様。
この情報格差が、買取ビジネスの前提になっている部分もあります。
私は、その前提を変えたいと考えています。
査定額を提示するだけでなく、その根拠を説明する。市場で何が起きているのかを伝える。そして、お客様自身が売却するかどうかを判断できるようにする。
そのために、毎日ブログを書いています。
開示するから、情報が入ってくる
情報を公開すると、自分の持っている知識が外に出ていくだけだと思われるかもしれません。
しかし、実際には逆のことも起きます。
情報を発信することで、人との接点が生まれます。
お客様から新しい相談をいただく。同業者と市場について意見を交換する。異業種の経営者から、まったく違う視点を教えていただく。
情報を開示することが、新しい情報を得るきっかけになるのです。
情報を囲い込むのではなく、情報を循環させる。
私は、この循環が小規模事業者にとって重要な経営資源になると考えています。
開示するためには、自分の判断を説明しなければならない
そして、ここからが本題です。
情報を開示するためには、自分自身がその情報を理解していなければなりません。
たとえば、ある車種のオークション相場が下落したとします。
単に「相場が下がっています」と書くことは簡単です。
しかし、なぜ下がったのか。
国内需要が弱くなったのか。輸出先の需要が変化したのか。出品台数が増えたのか。それとも、買い手が価格に慎重になっているのか。
こうした背景を考えなければ、お客様の判断材料にはなりません。
しかも、現実には理由が一つに決まらないことも多い。
だからこそ、事実と仮説を分けて考える必要があります。
ブログを書くために市場を観察する。観察したことを整理する。自分なりの仮説を立てる。そして、次の市場で確かめる。
この繰り返しによって、私自身の判断基準も磨かれていきます。
人に説明しようとすることが、自分の理解を深める。
これは書籍編集者として働いていた頃から感じていたことでもあります。
経営思想は、発信することで磨かれる
経営理念や経営思想というと、最初に明確なものをつくり、それに従って事業を進めるイメージがあるかもしれません。
もちろん、理念を持つことは大切です。
しかし私は、経営思想は日々の実践によって育っていくものでもあると考えています。
なぜ、このお客様には売却を急がない方がいいと伝えたのか。
なぜ、買取金額だけで競争しないのか。
なぜ、目先の売上につながらない情報まで公開するのか。
こうした問いに対して、自分の考えを文章にしていく。
すると、これまで感覚的に判断していたことが、少しずつ言葉になります。
言葉になると、次の判断に使えるようになります。
さらに発信することで、読者から反応が返ってきます。その反応によって、自分の考えが修正されることもあります。
つまり、経営思想は一度つくって終わりではありません。
実践し、言語化し、開示し、反応を受け取り、また考える。
この循環の中で、少しずつ深まっていくのだと思います。
メディアは、経営者が学び続けるための仕組み
私は以前から、小規模事業者こそ自分のメディアを持つべきだと考えています。
理由は集客だけではありません。
メディアを継続的に運営することで、経営者は自分の事業を観察し続けることになります。
何が変化しているのか。顧客は何に困っているのか。自社は何を提供できるのか。他社との違いはどこにあるのか。
発信を続けるためには、こうした問いから逃げられません。
そして、そこで得られた知見を蓄積していけば、個人の経験を組織の判断基準へと変えていくこともできます。
メディアは、広告や集客の道具であると同時に、経営者自身が学び、組織が学び続けるための仕組みにもなるのです。
情報を開示する経営へ
情報を開示すれば、必ず信頼されるわけではありません。
誤った情報や根拠の曖昧な情報を発信すれば、かえって信頼を失うこともあります。
また、顧客の個人情報や取引上の機密など、守らなければならない情報もあります。
だからこそ、何を開示し、何を開示しないのか。その判断にも経営思想が表れます。
私が大切にしたいのは、お客様が自分で判断するために必要な情報を、できる限りわかりやすく届けることです。
情報を開示するから、情報が集まる。
情報を開示するから、信頼が生まれる。
そして、情報を開示するから、自分自身の経営思想が深まっていく。
情報開示とは、自社の価値を伝える行為であると同時に、自社の価値をつくり続ける行為でもある。
これからも、そうした経営を実践していきたいと思います。











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