同じハイエースでも、買い方は違う。車買取のプロに必要な本当の技術とは
車買取の仕事を始めるとき、多くの人が最初に学ぼうとするのは、車の査定技術ではないでしょうか。
年式、走行距離、グレード、修復歴、車両状態。そして中古車オークションの相場。
もちろん、どれも大切です。車の価値を正しく見極められなければ、買取の仕事は成り立ちません。
特に高額車では、オークションの評価点が0.5違うだけで、落札価格に30万〜50万円もの差が生じることがあります。
わずかな状態の違いを見落とすことが、大きな損失につながる場合もあるのです。
しかし、私は以前から、車の査定ができるだけで買取のプロと呼べるのだろうか、と考えてきました。
同じハイエースでも、買い方は違う
例えば、令和5年式のハイエースと平成20年式のハイエース。
同じ車種ですが、買い取るときに重視すべきポイントは同じではありません。
令和5年式のような比較的新しい車では、グレード、走行距離、内外装の状態、オークション評価点などが価格に大きく影響します。
車両状態を精緻に確認し、その違いを相場に反映させる査定技術が求められます。
一方、平成20年式のような古いハイエースでは、事情が変わります。
車両の状態や仕様にもよりますが、オークション評価点が3.5点でもR点でも、落札価格があまり変わらないことがあります。
それよりも、エンジンやミッションの状態、走行可能性、国内外の需要、どの市場に買い手がいるのかが重要になる場合があります。
もちろん、古い車だから状態を細かく確認しなくてよいという意味ではありません。
ただ、車の価値が決まる仕組みが違うのです。
だからこそ、同じ車種であっても、同じ方法で買い取ればよいわけではありません。
車によって買い方を変える。そして、人によって伝え方を変える
もう一つ重要なのは、車を売る人の事情です。
例えば、古いハイエースに長年乗ってきた人がいるとします。
修理代が増えてきたので買い替えたいのかもしれません。
仕事で毎日使っているので、次の車が来るまで手放せないのかもしれません。
あるいは、まだ十分に乗れるけれど、今どのくらいの価値があるのか知りたいだけかもしれません。
車両情報が同じでも、こうした事情によって、提案すべき内容は変わります。
今売るのがよいのか。
しばらく乗り続けるのがよいのか。
次の車の納車に合わせて売るのがよいのか。
買取店の仕事は、金額を提示するだけでは終わらないはずです。
金額に頼らない商談とは何か
車買取の世界では、「金額だけで勝負しないことが大切だ」とよく言われます。
私も、その通りだと思います。
しかし、金額に頼らない商談とは、具体的に何をすることなのでしょうか。
単に親切に接することでも、世間話を長くすることでもないと思います。
お客様がなぜ売却を考えているのかを知る。
車の市場価値と、その根拠を分かりやすく伝える。
売る、売らない、待つという選択肢を整理する。
それぞれのメリットやリスクを説明する。
そして専門家として自分の意見を伝えたうえで、最後はお客様自身に決めてもらう。
私は、こうした一連の行為を「意思決定支援」と捉えています。
金額を軽視するわけではありません。
むしろ、正確な査定額と、その根拠があることが大前提です。
そのうえで、金額以外の要素も含めて、お客様が納得して選択できるようにすること。
そこに買取店の専門性があると考えています。
判断基準は変えない。商談は一人ひとりに合わせる
私が日々の仕事で大切にしているのは、判断基準を変えないことです。
事実を正確に伝える。不確実なことは不確実だと伝える。不都合な情報も隠さない。専門家として率直に意見を述べる。そして、お客様の決定権を尊重する。
これらは、どんな車でも、どんなお客様でも変わりません。
一方で、質問の仕方、説明する情報、提案する選択肢、商談の進め方は、一人ひとりに合わせて変える必要があります。
つまり、理念と判断基準は共通にする。しかし、商談は徹底的に個別化する。
これが、私の考える車買取の基本です。
買取のプロとは、何ができる人なのか
査定額を素早く出せること。
相場に詳しいこと。
交渉が上手なこと。
どれも大切な能力です。
しかし、それだけでなく、車の価値を見極め、人の事情を理解し、その両方を踏まえて買い方を変えられること。
そして、お客様が自分で納得して判断できるように支援できること。
私は、そこまでできて初めて、車買取のプロと呼べるのではないかと考えています。
この技術は、経験や勘だけに頼るものではなく、学び、実践し、振り返ることで磨いていけるものだと思います。
車を査定する技術と、人の意思決定を支援する技術。
その両方が必要なのです。
車によって買い方を変える。人によって伝え方を変える。しかし、理念と判断基準は変えない。
これからも、そんな買取の仕事を実践していきたいと思います。












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