世界から見る中古車市場|不安定な世界で相場を保ちやすい車、慎重に見たい車

中古車相場を見ていると、同じニュースがすべての車に同じ影響を与えるわけではないことがわかります。
円相場が動く、輸出規制が変わる、船積みに遅れが出る、ある国の景気が悪化する。こうした変化があっても、比較的相場を保ちやすい車があります。

一方で、それまで高値で取引されていたにもかかわらず、輸出環境が変わった途端に買い手が慎重になる車もあります。その違いは何でしょうか。

私は、その車に「いくつの出口があるか」が大きなポイントだと考えています。

中古車の「出口」とは何か

買取業者が車を見るとき、現在の人気だけを見ているわけではありません。
国内の販売店で売れるのか。海外へ輸出できるのか。
複数の国に振り替えられるのか。商用車として使えるのか。部品需要まであるのか。
一台の車が次に向かう場所を、ここでは「出口」と呼びます。

出口が一つしかない車は、その市場が止まったときに買い手を失います。
反対に、国内でも売れ、複数の国からも需要がある車は、
一つの市場が弱くなっても別の買い手が現れる可能性があります。

世界情勢が不安定なときほど、最高値よりも需要の厚みを見る必要があります。

比較的、強さを保ちやすい車

国内需要と輸出需要の両方がある軽・コンパクト

軽自動車やコンパクトカーの強みは、国内の生活需要が厚いことです。
燃費、税金、取り回し、維持費。
物価が上がる局面では、日常的に維持しやすい車の価値が見直されます。
さらに、車種や仕様によっては海外需要もあります。
国内で売れなくなったら終わり、輸出が止まったら終わり、ではなく、複数の可能性を持っている車は相場が急に崩れにくい傾向があります。

ハイエースなど、出口が複数ある商用車

ハイエースは、国内の仕事車としても、海外向けの商用車としても需要があります。
人を運ぶ、荷物を運ぶ、事業で使う、架装して使う。
使い道が多い車は、それだけ買い手の種類も増えます。
ただし、人気車だから必ず売れるわけではありません。
最近のオークションでも、売り手の期待価格と買い手の上限が合わず、流札する場面が見られます。
強い車ほど、過去の高値に売り手の期待が引っ張られやすい点には注意が必要です。

東アフリカに流通基盤がある日本車

東アフリカでは、日本の中古車が長く流通してきました。
ケニアでは、日本からの中古車が中古車市場の大きな割合を占めていると報じられており、
販売、整備、部品供給を含む流通基盤があります。

特にトヨタ車は、車両そのものの評価だけでなく、

・整備できる人がいる
・部品が流通している
・過去の使用実績がある
・再販売しやすい

という環境全体に支えられています。
車の性能が同じでも、直せる場所や部品がなければ市場は広がりません。
ブランドの強さとは、車体の強さだけでなく、その車を使い続けられる仕組みの強さでもあります。

輸出規制を確認したうえで、複数市場へ動かせる小型車

ロシア向けの車両輸出には、排気量や車種だけで一律に判断できない規制があります。
経済産業省も、対象となるかどうかはHSコードや仕様を確認し、輸出者が個別に判定する必要があると案内しています。乗用車や商用車を含め、規制は広範囲に及ぶため、「小排気量だから必ず輸出できる」とは限りません。

そのうえで、規制対象外であることを確認でき、ロシア以外の国や国内市場にも出口を持つ小型車は、買い手が一方向に偏りにくいと考えられます。

大切なのは、「ロシア向けだから強い」ではなく、一つの国に依存せず動かせるかです。

年式・状態が明確で、複数国へ振り替えられるSUV

SUVは世界的に需要があります。
ただし、「SUVなら何でも強い」という話ではありません。
年式、走行距離、修復歴、グレード、エンジン、ハンドル位置、輸入規制。
それぞれの条件で、行ける国は変わります。
状態が明確で、特定の一国だけではなく複数の市場で検討されるSUVは、情勢変化への対応力があります。
相場を保つのは、車格の高さよりも振り替えられる市場の多さなのです。

慎重に見たい車

UAE経由の再輸出に依存する高額SUV・高級車

UAE、特にドバイは、中古車の最終消費地であるだけでなく、中東、アフリカ、南アジアなどへの再輸出拠点でもあります。
JETROによると、ドバイには中古車輸入・再輸出の専門地区があり、日本から届いた右ハンドル車も、アフリカや南アジアなどへ再輸出されています。
この仕組みは、日本の中古車相場を支える一方で、注意も必要です。
UAEの先にある国の需要。港の混雑。船賃。金融環境。再輸出先の規制。
どこか一つが変われば、買い付け上限が下がる可能性があります。
高額車は一台あたりの資金負担も大きいため、物流や販売期間が延びたとき、買い手はより慎重になります。

国内需要が弱く、輸出先が一国に偏る車

相場が高いことと、市場が強いことは同じではありません。
一つの国のバイヤーが集中して買い、その結果として価格が上がっているケースもあります。
その国の規制や為替、税制が変われば、買い手が一斉に引く可能性があります。
過去の落札価格だけを見れば強く見えても、出口が一つなら、その相場は意外に不安定です。
「どこで売れているか」だけでなく、そこが止まったら、ほかに誰が買うのかまで考える必要があります。

船積み遅延で在庫期間が伸びやすい大型車

大型SUVや商用車は、一台あたりの輸送スペースを多く使います。
船腹不足や港湾混雑が起きれば、輸送コストだけでなく、在庫期間も伸びます。
在庫期間が伸びるということは、

・資金が寝る
・保管費がかかる
・為替変動を受ける
・到着時の相場が読みにくくなる

ということです。

輸出業者が買い付け価格を下げるのは、車の人気がなくなったからとは限りません。
物流リスクを価格に織り込んでいる可能性もあります。

為替を前提に直近まで高値追いされていた車

円安は、日本の中古車を海外から見て買いやすくします。
ただし、円安だから相場が必ず上がるわけではありません。
高値を支えていた前提が為替だけだった場合、円が急に戻れば買い付け上限も変わります。
特に、直近の相場を見て売り手が強気になりすぎた車は、買い手との価格差が広がり、流札が増えることがあります。
相場は下がっていないように見えても、成約しなくなっている。
これは相場転換の初期に起きやすい現象です。

価格だけでなく、

・応札数
・流札率
・商談の成立状況
・再出品の増加

まで見なければ、市場の変化はつかめません。

ロシア向け輸出規制の境界にある車

ロシア関連の輸出規制は、国際情勢に応じて追加・変更されてきました。
現在も、経済産業省は制裁迂回への注意を呼びかけており、ロシア以外の国向けであっても、最終的な用途や需要者を慎重に確認する必要があります。
輸出できるかどうかの境界にある車は、制度変更だけで買い手が慎重になる可能性があります。

規制対象かどうかだけでなく、
「将来も問題なく流通させられるか」
という不確実性まで価格に反映されるからです。

相場の強さは、最高値ではなく出口の数で考える

車の相場を考えるとき、つい直近の最高落札額に目が向きます。
しかし、世界情勢が不安定な局面で本当に見るべきなのは、最高値ではありません。
国内で売れるのか、海外でも売れるのか、何か国へ動かせるのか、仕事にも生活にも使えるのか。
一つの市場が止まったとき、別の市場へ振り替えられるのか。
出口が多い車は、買い手も多い。
買い手が多ければ、価格を支える需要にも厚みが出ます。
反対に、過去にどれほど高値だったとしても、買い手が限られていれば、その相場は外部環境に左右されやすくなります。

車を売りたい人が考えるべきこと

一般の方が、輸出規制や海外物流を詳しく調べる必要はありません。

ただ、「この車は、次に誰が買う可能性があるのか」
という視点は持っておいてよいと思います。
国内の家族が買うのか。事業者が使うのか。海外へ輸出されるのか。
部品として必要とされるのか。その買い手の幅が、車の価値を支えます。

だから査定金額を見るときも、金額だけではなく、
「どの市場を見て、この価格を出しているのか」
を聞いてみるとよいでしょう。その説明が、売却を判断するための材料になります。

最後に

世界情勢は、毎日変わります。為替も、規制も、物流も変わります。
そのため、この記事で挙げた車が必ず強い、必ず弱いということではありません。
大切なのは、車種名を覚えることではなく、

需要の厚みと出口の数を見ること。

市場を見るとは、価格だけを見ることではありません。
その車を欲しい人は誰なのか。その人はどこにいるのか。
環境が変わったとき、別の買い手はいるのか。
そこまで考えて、初めて現在の相場が見えてきます。
市場を見るとは、世界を見ること。世界を見るとは、その国の暮らしや事情を見ること。

そして、その先にいる一人ひとりの判断を見ること。
中古車相場は、そうした無数の判断が交差してできています。

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