UAEだけを見ても中古車相場は読めない。日本車の「出口」が世界で変わっている
中古車の査定をしていると、海外需要について考えることがよくあります。
日本で使われていた車が、次にどこの国へ行くのか。
国内で再販されるのか。
ロシアなのか。
アフリカなのか。
中東なのか。
あるいは、まったく別の国なのか。
中古車相場を考えるうえで、この「出口」はとても重要です。
そして2026年、日本から輸出される中古車の出口に、大きな変化が起きています。
UAEが大きく減っている
これまで日本の中古車輸出で非常に大きな存在だったのが、UAE(アラブ首長国連邦)です。
2025年には、日本からUAEへ25万台を超える中古車が輸出されました。
ところが2026年上半期は、大きく状況が変わりました。
1〜6月の輸出台数は約4万900台。
前年同期比では31.3%。
かなり大きな減少です。
これだけを見ると、
「日本の中古車輸出はかなり厳しくなっているのではないか」
と思うかもしれません。
ところが、全体を見ると違う景色が見えてきます。
日本の中古車輸出全体は減っていない
2026年1〜6月、日本から輸出された中古車は85万台を超えました。
前年同期を上回っています。
つまり、
UAE向けは大幅に減ったのに、日本の中古車輸出全体は増えている。
ということです。
では、どこが買っているのでしょうか。
上半期の主な仕向国を見ると、
ロシア 11万600台
タンザニア 8万9,036台
ニュージーランド 4万6,869台
チリ 4万6,133台
モンゴル 4万2,185台
UAE 4万903台
南アフリカ 3万8,691台
スリランカ 3万8,459台
ケニア 3万7,405台
となっています。
特に目立つのが、ロシアとタンザニアです。
ロシアは前年同期比132.3%。
タンザニアは184.1%。
スリランカも193.1%まで伸びています。
UAEという大きな市場が縮小する一方で、別の市場が大きく伸びています。
「UAEから他国へ移った」とは言い切れない
ここは慎重に考える必要があります。
UAE向けが減った。
ロシアが増えた。
タンザニアが増えた。
だから、
「UAEへ行っていた車が、そのままロシアやタンザニアへ行った」
とは限りません。
国によって求められる車が違うからです。
年式。排気量。右ハンドル・左ハンドル。車種。価格帯。
輸入規制。関税。現地での人気。
それぞれ違います。
ただ、統計から一つ言えることがあります。
一つの大きな市場が縮小しても、日本中古車の海外需要そのものが消えたわけではない。
これは非常に重要な変化だと思っています。
中古車相場にとって「出口が複数ある」ことは強い
なぜこの話が査定に関係するのでしょうか。
中古車の価格は、買いたい人が多ければ上がります。
逆に、買い手が一人しかいなければ、その買い手がいなくなった瞬間に価格は大きく下がります。
これは車種でも同じです。
国内小売しか出口がない車。
一つの輸出国しか買わない車。
国内でも海外でも売れる車。
世界の複数地域から需要がある車。
当然、相場の安定性は違います。
だから私は最近、
「この車はいくらなのか」だけではなく、「この車にはいくつ出口があるのか」
という見方を強く意識しています。
ロシアという出口
2026年上半期、日本中古車の最大の仕向国はロシアでした。
11万600台。
前年同期比132.3%です。
ただし、ロシア向けは注意が必要です。
日本からの輸出規制があるため、「ロシアで日本車が人気だから何でも売れる」という話ではありません。
排気量やパワートレーンなどによって、輸出できる車とできない車があります。
つまり重要なのは、
ロシア市場が強いかではなく、その車がロシア市場の対象になるか。
ここまで見なければ査定には使えません。
タンザニアという出口
もう一つ驚くのがタンザニアです。
上半期8万9,036台。
前年同期比184.1%。
日本の中古車の非常に大きな仕向国になっています。
東アフリカでは、日本車の耐久性や部品供給、整備のしやすさなどが評価される車があります。
日本国内では、
「走行距離が多い」「年式が古い」
という理由で評価されにくい車でも、海外では別の価値がつくことがあります。
これが中古車市場の面白いところです。
日本国内の常識だけで車の価値を考えると、市場を読み違えることがあります。
スリランカも急速に戻ってきた
さらに興味深いのがスリランカです。
上半期3万8,459台。
前年同期比193.1%。
一時期の輸入規制によって縮小していた市場が、再び日本中古車の大きな出口になっています。
こういう変化を見ると、
中古車の価値は車そのものだけで決まっているわけではない
ことがよく分かります。
一国の政策が変わる。輸入規制が変わる。
為替が変わる。物流が変わる。
すると、日本のオークションで同じ車に入る金額まで変わります。
世界の出来事が、日本の査定価格まで届く
中古車市場は、こんな流れでつながっています。
海外の政策や経済が変わる。
↓
その国の中古車需要が変わる。
↓
日本の輸出業者の買い方が変わる。
↓
オークションの応札が変わる。
↓
相場が変わる。
↓
買取店の査定価格が変わる。
だから私は、国内の中古車相場だけではなく、海外の輸出台数や政策も見るようにしています。
車を査定しているのですが、その向こう側にある世界市場を見ている感覚に近いです。
「輸出車」という言葉も、かなり粗い
査定の現場では、
「これは輸出で強い車ですね」
という言葉を使うことがあります。
でも最近、この表現だけでは粗すぎると思うようになりました。
どこの国へ輸出されるのか。
その国ではなぜ需要があるのか。
直接輸出なのか。
別の国を経由するのか。
どんな規制があるのか。
物流は正常なのか。
そこまで分けないと、本当の意味で「輸出が強い」とは判断できません。
同じ輸出車でも、
ロシア向け。東アフリカ向け。UAE向け。
スリランカ向け。
では、まったく違う市場だからです。
これからの査定で重要になる「出口の数」
2026年上半期の輸出統計を見て、改めて感じています。
中古車相場を考えるうえで、
「出口の数」は重要な判断基準になる。
一つの市場だけに依存している車は、その国の政策や為替、物流が変われば一気に弱くなる可能性があります。
逆に、
国内でも売れる。海外にも売れる。
さらに複数国が買う。
そんな車は、一つの市場が弱くなっても別の買い手が支えてくれる可能性があります。
これは相場の「高さ」だけでは分からない部分です。
今日の判断基準
2026年上半期。
UAE向け中古車輸出は大幅に減りました。
それでも、日本の中古車輸出全体は前年を上回っています。
ロシア。タンザニア。スリランカ。南アフリカ。ケニア。
さまざまな市場が動いています。
ここから私が考える判断基準はシンプルです。
「海外で人気か」ではなく、「その車には、いくつの出口があるのか」。
一つの出口だけを見るのではなく、世界中の買い手を見る。
中古車相場は、日本だけで作られているわけではありません。
そして2026年は、そのことが非常によく見える一年になっていると思います。













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