海外に需要があっても、車が高く売れるとは限らない。中東の物流リスクから考える売り時|今週の中古車市場
中古車の価格を考えるとき、私がいつも意識しているのは、その車を最終的に誰が買うのか、ということです。
国内で販売されるのか。それとも海外へ輸出されるのか。
どこに需要があるかによって、中古車の価値は大きく変わります。
しかし、ここで一つ考えたいことがあります。
海外にその車を欲しい人がいることと、実際にその車を輸出できることは、同じではありません。
今週は、中東の海上輸送をめぐる動きから、中古車の価値と売却時期について考えてみたいと思います。
ホルムズ海峡で何が起きているのか
中東のホルムズ海峡では、商船への攻撃が相次いでいます。
国際海事機関(IMO)が10月22日時点で公表した情報によると、ホルムズ海峡と周辺の中東海域で確認された船舶関連事故は累計120件に達しています。
また、10月23日のロイター報道では、10月の商船への攻撃件数が、調査対象期間中で最多となったことが伝えられました。
これは原油やエネルギー輸送だけの問題ではありません。
海上輸送の安全性が損なわれれば、船会社の運航判断や輸送費、保険料にも影響する可能性があります。
中古車の輸出も、こうした国際物流の仕組みの中で行われています。
ただし、今回の事故によって日本からの中古車輸送費が具体的にいくら上昇したのか、あるいは何台の輸出が取りやめになったのかについては、現時点で確認できていません。
確認できた事実と、今後考えられる影響は分けておく必要があります。
UAEは中古車の重要な輸出先だった
UAE(アラブ首長国連邦)は、日本の中古車輸出を考えるうえで重要な国です。
UAE国内で使われる車だけでなく、周辺地域への再輸出を考える際にも注目される市場です。
ところが、2026年8月の日本からUAEへの中古車輸出台数は2,418台。前年同月比で87.2%減少しました。
非常に大きな変化です。
ただし、この減少がすべてホルムズ海峡の問題によるものだとは言えません。
輸出先の需要、取引ルート、船便の状況など、複数の要因が考えられます。
ここで私が注目したいのは、輸出台数が大きく変化したという事実と、その背景にある物流リスクです。
海外に需要が存在していても、日本のオークションで以前と同じように買い付けられるとは限らない。
そんな可能性を考える必要があると思います。
輸出バイヤーは何を考えて車を買うのか
中古車オークションに参加する輸出バイヤーは、海外で販売できる価格を考えながら仕入れています。
仮に海外での販売価格が変わらなくても、日本から運ぶ費用が増えれば、仕入れに使える金額は小さくなります。
保険料が上がった場合も同じです。
さらに、船便が確保できなければ、販売までの時間が長くなる可能性があります。
その間、資金を車に固定することにもなります。
つまり、海外での販売価格が高いからといって、日本のオークションで高く買えるとは限らないのです。
これは、先週のブログで取り上げた「売り手と買い手の価格認識のズレ」ともつながります。
出品する買取店には、仕入れ価格と必要な利益があります。
一方、輸出バイヤーには、海外での販売価格から経費やリスクを差し引いた仕入れ上限があります。
その差が広がれば、応札が入っても成約しない車が出てきます。
ただし、中東の物流リスクが実際にUSSの成約率低下を引き起こしていると確認できたわけではありません。
今回考えたいのは、バイヤーの仕入れ判断を変える要因の一つとして、物流リスクがあるということです。
円安だから高く売れる、とは限らない
中古車輸出の話になると、為替が注目されます。
円安になれば、海外のバイヤーは日本の車を買いやすくなる傾向があります。
しかし、為替だけで仕入れ価格が決まるわけではありません。
円安によって生まれた余裕が、輸送費や保険料の上昇によって小さくなることも考えられます。
輸出先の税制や輸入規制が変われば、買える車の条件も変わります。
そして、そもそも船が予定どおりに運航できなければ、取引自体が難しくなることもあります。
だから私は、中古車相場を考えるとき、為替だけでなく輸出先の事情や物流の変化も確認したいと思っています。
円安は輸出に有利な条件の一つですが、輸出採算を保証するものではありません。
すべての車が同じ影響を受けるわけではない
ここも重要なところです。
中東向けの輸出環境が厳しくなったとしても、日本の中古車すべてが同じ影響を受けるわけではありません。
国内で需要がある車もあります。
東アフリカなど、別の地域に需要がある車もあります。
実際、2026年8月のタンザニア向け中古車輸出台数は16,920台で、前年同月を大きく上回りました。
もちろん、タンザニア向けが増えたからといって、中東向けの減少分を補っていると断定することはできません。
輸出される車種も、取引条件も異なるからです。
それでも、輸出先によって市場の動きが異なることは分かります。
一つの販売先に依存している車と、国内外に複数の販売先がある車。
この違いは、相場の安定性を考えるうえで重要ではないでしょうか。
では、今売るべきなのか
ここからは、車を売ろうとしている方に関係する話です。
海外の情勢が不安定だからといって、すぐに車を売った方がよいとは限りません。
反対に、円安だからもう少し待てば高く売れる、とも限りません。
大切なのは、ご自身の車にどのような需要があるのかを確認することです。
国内で安定した需要があるのか。
輸出需要が価格を支えているのか。
特定の国や地域の買い手に依存していないか。
そして、今のオークションで実際にどの程度の応札があるのか。
こうしたことを確認したうえで、売却時期を考える必要があります。
例えば、現在の相場が安定していて、今後も車を使う予定があるなら、乗り続ける選択も合理的です。
一方、海外需要によって高値がついていた車で、実際の応札が弱くなり始めているなら、売却時期を早めることを検討してもよいかもしれません。
もちろん、次の車の納車時期や車検、生活上の必要性も考えなければなりません。
相場だけで、すべての人の売り時を決めることはできないのです。
今週のオークションでは何を確認するか
今週は、輸出需要が価格に影響していると考えられる車を中心に、応札状況を確認してみたいと思います。
注目するのは、落札価格だけではありません。
以前と比べて応札が弱くなっているのか。
流札した車には、どの程度まで買いが入っていたのか。
同じ車種でも、年式や走行距離、仕様によって違いがあるのか。
そして、国内需要も見込める車と、輸出需要への依存が大きい車では、買われ方に違いがあるのか。
こうした点を確認したいと思います。
ただし、オークションの結果だけで、その車がどの国へ輸出されるのかは分かりません。
買い手の最終的な販売先が確認できない場合には、推測の域を出ないことを意識しておきたいと思います。
海外に需要があることと、海外へ売れることは違う
中古車の価値は、日本国内だけで決まるものではありません。
海外の需要によって、思いがけない価格がつく車もあります。
しかし、その需要が実際の仕入れ価格につながるためには、輸送や通関、現地での販売まで含めて採算が合う必要があります。
私は、査定とは過去の相場を当てはめるだけの仕事ではないと考えています。
今、その車を買うバイヤーが何を考えているのか。
どのようなリスクを抱えているのか。
そして、どこまでの価格なら買えるのか。
そうしたことを考えることが大切です。
海外に欲しい人がいる。それだけでは、今日の買取価格は決まりません。
今週も、世界の動きとオークションの結果を照らし合わせながら、車を売る方の判断材料を増やしていきたいと思います。













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