提供したものと、相手が受け取った価値は同じではない

最近、あるサービスを受けた経験から、改めて考えさせられることがありました。
それは、サービスを提供する側が「価値を提供した」と思っていても、受ける側が同じように感じているとは限らない、ということです。
これはコンサルティングに限った話ではありません。
車買取でも、飲食でも、教育でも、あらゆるサービスに共通する問題だと思います。
そして経営者として、この違いを理解しておくことは、とても大切なのではないでしょうか。

ノウハウを提供することが、価値とは限らない

先日まで、とあるコンサルティングを受けていました。
結果として、途中で契約を終了する判断をしました。
理由はいくつかあります。
ただ、最も大きかったのは、私が求めていたものと、実際に提供されていたものに違いを感じたことでした。
ノウハウを教える。
タスクを決める。
進捗を確認する。
もちろん、これらも支援の一部です。
しかし、それだけで事業が前に進むとは限りません。
そもそも、ノウハウを知るための手段は、今やいくらでもあります。
本や動画、オンライン講座、AIなどを活用すれば、多くの情報にアクセスできます。
経営者がお金を払って専門家に依頼するのは、単に情報が欲しいからではないと思います。
自分では気づかなかった問題を発見したい。
判断の精度を高めたい。
実行できない理由を一緒に考えてほしい。
そして何より、成果につなげたい。
そこにこそ、支援を受ける意味があるのではないでしょうか。

自分が成果を出す力と、人に成果を出してもらう力は違う

今回の経験から、強く感じたことがあります。
それは、自分自身が成果を出す能力と、クライアントに成果を出してもらう能力は、まったく別物だということです。
自分が成功した方法を、そのまま相手に伝える。
それで成果が出る人もいるでしょう。
しかし、相手には相手の事情があります。
経験も違えば、事業環境も違う。
使える時間も、得意なことも、目指しているものも違います。
だからこそ、支援する側には相手を理解する力が必要になります。
相手は何に困っているのか。
なぜ実行できないのか。
本当にその方法が合っているのか。
そもそも、その目標は適切なのか。
こうした問いを持ち続けることが重要なのだと思います。

「言った通りにやらない」で終わらせない

成果が出ないとき、人はどうしても自分を正当化したくなります。
「自分は悪くない。相手が悪い」
誰もがそう思いたくなることはあるでしょう。
しかし、支援する側がそこで思考を止めてしまったら、改善は生まれません。
「自分が言った通りにやってくれないから成果が出ない」
そう考える前に、問うべきことがあるはずです。
なぜ実行できないのか。
納得できていないのか。
伝え方が悪かったのか。
実行するための環境が整っていないのか。
必要なら、当初の計画そのものを見直す。
ときには、やらないことを一緒に決める。
もちろん、クライアント自身にも実行する責任はあります。
ただ、支援者の役割は、指示を出して終わることではありません。
相手が成果を出せる状態をつくること。
そこまで考えるのが、本当の支援ではないかと思っています。

契約前と契約後で、熱量が変わっていないか

もう一つ、今回の経験で考えさせられたことがあります。
それは、契約前と契約後の姿勢です。
契約前は、とても熱心に説明してくれる。
こちらの話を聞き、可能性を語り、期待を持たせてくれる。
契約前のセッションは2時間に及びました(結果的に一回のセッションとしては
この時がいちばん長い時間となりました。)。

ところが、契約後になると、その熱量が変わってしまう。
もちろん、すべてのサービスがそうだというわけではありません。
しかし、提供する側と受ける側では、契約という出来事の意味が違うことがあります。
提供する側にとっては、売上が確定する瞬間。
受ける側にとっては、これから価値を受け取るためのスタートです。
この認識の違いは、とても大きい。
契約はゴールではない。責任の始まりです。
どれだけ魅力的なことを語っても、契約後の行動が伴わなければ、信頼は失われてしまいます。

言行一致が信頼をつくる

経営者は、さまざまな理念や方針を語ります。
チームで取り組む。
顧客に寄り添う。
成果にコミットする。
どれも大切な考え方です。
しかし、それを語るだけでは意味がありません。
自分自身が実行しているか。
約束したことを守っているか。
相手が困っているときに向き合っているか。
言葉と行動が一致しているかどうか。
結局、信頼はそこから生まれるのだと思います。
今回の経験は、私にとって大きな反面教師になりました。
自分が支援する立場になったとき、同じことは絶対にしない。
そう言える判断基準ができただけでも、学びはあったと感じています。

クライアントの横に座る

支援する仕事について考えるとき、私が大切にしたい表現があります。
それは、「クライアントの横に座る」ということです。
上から正解を教えるのではない。
正面から正論を伝えるのでもない。
後ろから指示するのでもない。
同じ方向を向き、共通の目標に向かって考える。
相手の状況を理解し、必要な判断材料を提供する。
うまくいかなければ、一緒に原因を考える。
そして、相手自身が判断し、行動できるようにする。
支援とは、そういう仕事ではないでしょうか。
本業でも副業でも、この考え方は変わらないと思います。

車買取でも、同じことが起きている

ここまで書いてきたことは、私自身の車買取の仕事にもそのまま当てはまります。
買取業者は、査定額を提示します。
その金額が高ければ、お客様に価値を提供できたと考えるかもしれません。
しかし、お客様が求めているものは、本当に金額だけなのでしょうか。
今売るべきなのか。
もう少し乗ったほうがいいのか。
提示された金額は妥当なのか。
他社と比較すべきなのか。
契約後に減額される可能性はないのか。
お客様が知りたいことは、実にさまざまです。
そこで私が大切にしているのが、判断基準をお渡しすることです。
車を査定する。
中古車市場を観察する。
お客様の事情を聞く。
そして、売却に必要な情報と選択肢を整理する。
その結果、私たちに売却していただけることもあれば、売らないという判断になることもあります。
それでいいと思っています。
私たちが提供したいのは、査定額という数字だけではありません。
お客様が後悔しない判断をするための支援です。

経験を言語化して、判断基準に変える

今回の出来事を、単なる不満として終わらせることもできました。
しかし、何が問題だったのかを考え、言葉にしてみると、いくつもの学びが見えてきました。
教えることと支援することは違う。
タスク管理と成果支援は違う。
契約はゴールではなく、責任の始まり。
言行一致が信頼をつくる。
そして、支援者はクライアントの横に座る。
こうして整理すると、今後自分がどんな仕事をしていきたいのかも、より明確になります。
私はこれまで、車の査定や市場観察、お客様との対話から得た経験を、ブログや診断書、noteなどにまとめてきました。
経験したことを言語化し、判断基準として整理する。
そして、それを他の人にも使える形にする。
これが、メディアを軸に事業を考えてきた理由でもあります。
経験は、そのままでは資産にならない。言語化して、初めて他人にも渡せる価値になる。
今回の経験も、その一つになりました。
そして、改めて思います。
提供したものと、相手が受け取った価値は、必ずしも同じではない。
だからこそ、サービスを提供する側は、常に相手の立場から自分の仕事を見直さなければならない。
このことを忘れずに、これからも仕事を続けていきたいと思います。

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